空港有料道路から国道10号線に乗り帰宅ラッシュで渋滞の道を
  別府に入ると完全に夜になっていた。別府から国道500号を西に向
  かい、明礬温泉を目指して急な坂道を上がって行く。この道への
  入り口もコンビニで2回も訊いた。
                   大分自動車道の下をくぐりしばらく行くと急なヘアピンカーブ
                 があった。そこから真っすぐに進む道に入り周辺図の看板を眺め
                 る。するとそこに鶴の湯の文字を発見した。目指す温泉はその先に
                 ある。
    鶴の湯を目指して街灯のない細い道を行く。その鶴の湯のあた
  りまで来ても看板も灯りもない。もう営業していないのだろうか。
  さらに行くと舗装が終わり、ダート道になった。大きな穴が爆撃
  跡のようなとんでもない道だ。









                    腹を路面で擦るようになった。車はここまで。路肩に駐車
                    し見下ろすとススキの向こうに別府湾の夜景が広がった。
別府・ススキと夜景の秘湯
  







  マグライトを用意し真っ暗な山道を歩き出した。
ススキ越しの夜景は明るいが行く手の道は闇の中
に消えていた。人類が生まれて数10万年が過ぎてい
る。いいかげんにDNAから闇への恐怖心は消えても
良いはずなのに。

  右手の山肌、ササヤブの中に幾何学的な影が見
えた。水音もするのでこの構造物が下のトビ集落の
上水道水源になっているところのようだ。

  歩き出して15分ほどでなにやら石の標識の立つ    
広場に出た。車も2台駐車してある。「鍋山温泉郷
平成6年」とある。かつてここに温泉郷があった
ことを示すモニュメントなのだろうか。とりあえ
ずここが温泉への登り口で間違いないようだ。
  

  林道はまだ続くようだがゲー
トがあり、その先はあまり踏ま
れていないようで草が背高く生
い茂っていた。おかしい。

  温泉といえば温度調節に水も
必要である。林道と平行した沢の
あたりを見ると沢に向かって踏
み跡があった。

  マグライトの頼りない灯りで
沢を遡る。川底を飛び石伝いに歩
いたり、岸の高台脇の踏み跡を
辿ってしばらく行くと目の前に
地獄谷が広がった。亜硫酸ガスの
刺激臭も風に乗ってやって来る。
しかしその谷を流れるせせらぎ
に手を浸しても暖かくない。いく
つかの場所で試みたがどれも一
緒だ。

  途方に暮れていると先行者の声
がした。目星をつけた場所よりも
ずっと左の方からだ。教えを請い
踏み跡を辿る。

  ススキに囲まれたそこは大きな
岩が鎮座し、その麓に二畳ほどの
湯船が二つ段違いに並んでいた。
湯船は天然岩を上手く利用した造
りになっている。大岩の反対側から
は硫黄臭のする蒸気が勢いよく上
がっていた。

  湯船の壁面も底面も一枚岩なの
で肌当たりも良い。

  揺れるススキに見つめられなが
ら身体を伸ばすとその向こうに別
府湾の夜景も見渡せる。

  雨が降ってきた。傘を持ってこな
かったのを悔やんだが仕方ない。
沢を駆け上る風が心地良い夜景に
向かって下った。











参考 : 湯布院・別府の温泉みしゅらん