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極私的映画戯言

 
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突入せよ!あさま山荘事件                   ★★+★1/2
突入せよ!あさま山荘事件(チラシ)
 この事件が起きた30年前、私はまだ生まれていない。もちろん、当時ヘルメットをかぶって国を変えようとしていた人たちの考えも知るはずがないし、実際に報道に携わった方々もすでに現場を離れた方が多く、生の声に耳を傾ける事も出来ない。唯一の道は、のちに伝えられた各メディアからの情報をもとにして、時代背景を含め、相当複雑な問題をはらんだ事件だったという事を知り得るだけだ。
 
 当時、テレビ各社はこの突入の様子をCMを入れず生放送し、実に90%近い視聴率を記録した。これは未だに破られていない。それほど国民の関心が高かった戦後の犯罪史に残る大事件だったということだ。
 偶然だが、この映画が公開されると決まった後から、ある番組が製作された。昨年だったか、今年だったか、某国営放送でこの事件を取り扱ったドキュメンタリーを見た。あの中では、現場の最前線でどういう事が起きていたのかよりも、警察のために地元主婦会が温かいおにぎりを作った話とか、放水車用の水を苦労して確保した話だとか、いかに地元が事件解決に協力、貢献したかという舞台裏の筋の方がメインだった。
 
 しかし、あの番組を見て、この映画の原作者である佐々淳行氏が「あれが事実のすべてではない。あれでは真実が伝わりきっていない」と、ある民放の番組に出演して話していた。
 たしかに、差し入れの温かいおにぎりはありがたかった、とても感謝しているが、あの極寒の中ではわずかな時間で握り飯はおろか、折り詰めの仕出し弁当ですらカチカチに固まって歯が立たず、もっぱら現場の人間に重宝がられたのは当時開発されたばかりのカップラーメンだったとか、苦労してかき集めた何十トンという水も、実際に放水を受けながら、どんな思いで全身水浸しになりながら耐えていたかという事をしきりに訴えておられた。
 
 ついに有事法制が国会審議に入り、日本の危機管理についての法整備が、また一歩進もうとしている。もちろん、今回の法案は昨年の米国テロを受けて、急いで作ろうとしているものではない。詳しくは触れないが、日米安保条約の第5条と第6条に基づいての国内法整備が遅れているためだ。今の日本では、安保条約の第6条を遵守するための法律は存在するが、第5条の部分をカバーする為の法律が存在しないのだ。今の時点で、万が一「有事(この定義も曖昧としているが」が起きた場合、いったい誰がどこで統率して、誰に指揮権があって、実際現場でどのようにして事に当たるのか、また地元との関係はどうするのか、最後には誰に責任があるのか。そういったことを決定したり決断したりする部門というか部署がハッキリしていないところに問題がある・・・。
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜あらすじは割愛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
 少し脱線してしまったが、この事件が起きた当時は、警察機構の役割分担やなわばり意識が強く、階級制度でハッキリと身分が分かれ、考え方も縦割りで横の連携がない。(・・・もっとも、これは昔に限った話ではないと思うが(^-^;)
 そんな中で、警察庁、警視庁(=機動隊)、地元警察がどう協力するべきか、またどうまとめるのか、これが当時佐々氏がぶつかった難問だった。そのへんは、事件発生後、現場に集結した面々のやりとりや、突入後の現場警官の錯乱ぶりから十分に推測できるし、非常にうまく描かれているなぁと感じた。逆に言うと、仮に誇張して映像化されているとはいえ、「よくもまあ、あそこまで混乱してて事件解決に至ったもんだ」というほどだ。
 
 延べ35000人近い警官が動員された事件という事だけあって、出演する俳優も多い。でも、なぜだかよく分からないが、邦画ってどうしてこう役所広司を目にする機会が多いんだろう?(笑) 監督がキャスティングを考えたときに、以前一緒に仕事をした事のある俳優を選択するのもあるだろうが、もう少し柔軟に役柄にあわせて選ぶ事も出来るんじゃないかと思ってしまう。が、決して今回の佐々役に不満があったわけではない。現在もご健在で、あまりにもメディアに露出する事が多い佐々氏を下手に真似ても、きっとどこかでボロが出るだろうしね。現場で指揮を執っている姿と、佐々氏が一人になったときのオンとオフの差が奇妙なぐらいに描かれていて、何を狙っているのか読み切れない場面もあったが、役所がスクリーンで時折見せたちょっとした仕草や表情が本物と少しダブる程度だったのを見て、無理せず自然体で演じているなぁと感じ、印象は良かった。
 
 鑑賞前の話では、もっと“笑い”の要素が多いと聞いていたが、それほど腹を抱えるような場面はなかった。確かに「狙ってるな?」というシーンはチラホラ出てきたが、残念ながら関西人のツボにはハマらなかった。ちょっと笑いを取るようなエッセンスを持った気の利いた俳優陣じゃなかったし。それでも、あの緊張感のある現場ですっとんきょうな事をする人もいたし、どこまで事実に沿っているのか微妙だが、ユーモアの効いた場面は出てくる。そんなに重苦しい雰囲気のまま、2時間13分も耐えなくていいのが○だった。
 個人的には、長野県警の山根部長と電話交換手に興味を惹かれてしまった。それとお約束だが、役所広司演じる「佐々監察官」、宇崎竜童演じる「宇田川管理官」ら、当時指揮を執った実在の3人が一瞬だけ登場するシーンがある。何か会話をしていたようだったが、その内容まで聞き取る事は出来なかった。本当に1カットだけの出演なので、マニアックな人は見逃さないようにして欲しい。そして、もうひとつ。パンフレットにすらクレジットされていない犯人役の面々。これは、作り手が敢えて伏せてあるようなので、触れないでおく(笑) いったい誰が演じているのか、その目で注意深く観ていてもらいたい。ほんの一瞬だけ映るんで実在の3人を探すよりも、もっと集中していて欲しい。スタッフロールが流れたからといって席を立つのは早すぎる。その後に、主要出演者の紹介カットが入っているんで、見逃した人はそこで確認できるようになっているから(^-^;
 
 映像的には、全編、パナソニックのデジタルHDカメラで撮影され、フィルムの感性を出したままフルデジタルで編集された。最近では、現像の作業を省いて即編集に入れて、しかも処理を簡単に行えるデジタルメディアでの撮影が主流になりつつある。ジョージ・ルーカスがソニー製のデジタルHDカメラを取り入れて、先の「スター・ウォーズ〜エピソード1」を撮影した事は有名だ。このデジタル映像に、当時のニュース映像が時折挟まれていた。スクリーン全面に取りきったり、部屋の片隅にあるテレビのモニターにはめ込んだりして、当時の様子を醸し出していた。だが、「これは!」という心を掴まれるような斬新なモノは感じられなかった。
 ストーリー的に、同じ部屋と場所が繰り返されるが刻一刻と状況が変化していって、人々の苛立ちや不満が交錯。テンポがあって、そのマンネリを忘れさせてくれる。剣道場と突入のシーンは、手持ちカメラのカットがたたみ掛けるような勢いで使われ、臨場感を出している。山荘内では、真っ暗な中を警官と犯人がうごめく様子が続いて、いったい何が起きているのか一目では分からないようになっていた。実際、昼間とはいえ、3階建てで窓を閉め切ってあっては室内の様子を電灯無しではうかがえなっただろうし・・・。それにしても、犯人側の目線カットは時々出てきたが、実際に中で何が起きていたのかという映像がなかった。それはもちろん、例え原作で触れていたとしても想像に過ぎないし、そこをもっともらしく創ろうとしても犯人達の行動が詳しく分かっていない状況では、描きようがなかったんじゃないだろうか。
 
 近年、「よど号ハイジャック事件」に関わったとされる人物やその妻らが、帰国するという情報を元に入国と同時に身柄を確保されるなど、昭和40年代に起きた左翼派の事件は21世紀になった今でも、まだ影を落としている。実は、このあさま山荘事件の実行犯の一人も未だ海外を逃亡しているとされ、本当の意味で解決には至っていない。そういう事を風化させずに後世に伝えるためには、一石を投じる作品になったんじゃないかと思う。全編が終わっても、中には席を立たない世代の方々もいたりして、当時どれだけ大きな影響力があった事件だったのかと、改めて感じさせられた。★には反映されていないが、これを機会に、もう一度原作を読んで勉強しておかなければ…と考えさせられる作品だった。
 
 
原    作    佐々 淳行
脚本/監督   原田 眞人
プロデュース   原  正人
  
出    演    役所 広司  (佐々淳行 警察庁・警備局付警務局監察官)
           宇崎 竜童  (警視庁・宇田川主席管理官)
           天海 祐希  (佐々幸子)
           伊武 雅刀  (長野県警・野間本部長)
           藤田 まこと  (後藤田正晴・警察庁長官)
           ・・・ほか
 
【公式サイト】
http://www.toei.co.jp/asamasansou/
 
<鑑賞データ>  2002年5月12日 東映シネマ1(16:25の回)
 
 混雑はなし。客数は30〜40人といったところか。さすがに30年前の犯罪史実に基づく内容だけあって、年齢層は高め。どう見ても、当時20代だったであろう初老の方々が目につく。ご夫婦で来られている方もいて、よほどの関心事だった事が伺えた。まあ、中には私のように、生まれてもいない人も数人混じっていて、事件の風化防止に一役買っているようだ。

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Last updated: 2004/10/20