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ショパン生誕200年。ピアノの抒情詩人・内藤晃が、往年の巨匠時代の銘器/1912年製ニューヨーク・スタインウェイ(CD368)で奏でる、ショパンの「祖国ポーランドへの愛歌」。2本のピュアなマイクロフォンのみによる究極のワンポイント録音で蘇る黄金の響きが、ショパンの魂の慟哭を見事に表現。 ∮ 小さく美しい“気まぐれ”が集積されていく彼の音楽に、耳をそばだてずにはいられない。ふとした驚きやこみあげる懐かしさ、ほとんど傷つけられるような厳しさや、人知れず浮かぶ微笑。なんと人を集中させる音楽家なのだろうか。 ∮ 「24の前奏曲」では、徒に指だけが先走ることも、過剰に感情に流されることもなく、各曲のツボを的確に捉え、全体をサラリとスマートにまとめる手腕が光る。併録曲も方向性は変わらない。使用楽器は1912年製のヴィンテージ・ニューヨーク・スタインウェイ。その暖かな響きにも傾聴したい。
音の叙情詩人・内藤 晃の溢れ出る優しさに満ちた四季の歌。極上の骨董家具のようなベヒシュタインの芳醇な響きで、瞬時に移りゆく季節の光と影を見事に表現した話題のディスク。
録音:2007年10月12-13日、東大和ハミングホール(01-10)2007年5月6日、杉並公会堂大ホール(ライヴ)(11) ∮ 若い音楽家の台頭が目覚しい。内藤晃は1985年生まれだから、今年で23歳。栄光学園高校のときに、日本クラシック音楽コンクール高校の部の全国最高位を得て、現在東京外国語大学のドイツ語学科に通う傍ら、桐朋学園大学で指揮の研鑽を積んでいるという。スカルラッティ、モーツァルトからロマン派、近現代までを並べた、いわゆるリサイタル・プログラム。スカルラッティとモーツァルトのタッチはよく研磨され、粒立ちが揃っていてとても美しい。いや、それ以上にスピリットがあるのがいい。ピアニストの感じたものが、音や演奏からダイレクトに伝わってくるのだ。スカルラッティの《ソナタ》ロ短調L.33に込められた哀愁は色濃く、ホ長調L.23はメリハリの効いた鋭角的なリズムが楽しい。モーツァルトの《ソナタ》ハ長調K.330の第1楽章は引き締まったテンポ、熱気が籠もったパッセージと微妙に施されたアゴーギクが、演奏に生きた表情を与えている。隅々まで楽曲を理解した上での演奏であることを示唆する明晰さを持ちながら、同時に作品の内面と一体化した純粋な表現は聴き手を惹きつけてやまない。第2楽章では十分なテクスチュアの透明度を伴いつつ、余分なものをそぎ落としたシンプルな歌を聴かせ、終楽章は生き生きと弾む。モンポウの《歌と踊り》第6番の哀愁には胸に迫るものがあり、後半では若い情熱を思い切り解き放つ。フォーレの《即興曲》は歌に溢れ、スクリャービンの《ソナタ》第4番では繊細かつ詩的な感受性が認められる。メトネルの《春》の艶やかな色彩感と濃密な情念は、まさしく春の息吹そのものだ。これにより一層の洗練とスケールの大きさが加われば、インターナショナルな舞台で活躍するアーティストとなることは間違いない。 ∮ 内藤は85年生まれの新鋭。ワザやスタイルで突き抜けて耳目驚かせるような演奏家ではない。むしろ作品のヘソをさらり捕まえ、衒いなく音楽に耳を引きこんで魅せる。幅広い選曲はその才の証。ニュートラルで柔軟な特質が、メトネルなど近代モノでキラリ輝く。 |
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