ヘランブートレッキング(ネパール)に参加して

2006.10.2011.0820日間)

                                         相田達雄


1.はじめに

今回のヘランブートレッキングはカトマンズから北へ約15km、バスで1時間弱に位置するスンダリジャルから歩き出し、ランタン国立公園地区のヒンズー教聖地ゴサインクンドまで行き、そこから引き返してカトマンズに戻るという正味2週間のトレッキングである。

カトマンズの標高は1350m、起点のスンダリジャルは1460m、毎日数キロ歩き次第に高度を上げて身体を順応させながら、4610mの峠をこえて4312mのゴサインクンドに至る。そこには神秘的な湖が2つあり複雑にいりくんだ岩の裂け目から聖水が流れ、祠には小さなシバ神の像が置かれている。まわりには無数の綱に五色の旗が吊るされ、風にはためいている。さらに宿の北面にある高さ200mほどの峰に登れば、白雪に覆われたランタンリルンやガネッシュヒマールの山々が180度のパノラマビューで展開される。

ネパールのヒマラヤトレッキングは梅津温さんがリーダーになって今回は5度目の企画である。高齢者にふさわしい無理のない計画で、落伍者もなく全員無事に歩きとおし感動と喜びをともにすることができた。

ヒマラヤ・へランブー/ゴサインクンドの小ピーク(4600m)から望む白銀のランタンリルン(7225m)
                                         柳沼希博氏撮影



2.参加者

今回の参加者は10名でいずれも山歩きの好きな人たちである。半数以上がヒマラヤトレッキングのリピーターであり、わたしも2001年のランタントレッキング以来5年ぶり2度目である。内訳は夫婦2組、単身男性6名、ちなみにLSC会員は6名(梅津温リーダー、飛鳥間正郎、小林義明・安子、柳沼希博、相田達雄)、他に梅津さんの友人・知人が4名(TNさん、AMさん、TK夫妻)。

カトマンズの宿泊ホテルの前で


3.予算

バンコク経由カトマンズまでの往復航空券141,490円、バンコク1泊カトマンズ3泊のホテル代13,000円、トレッキング費用(ロッジ代、雇用者賃金、食事代など)81,000円、トレッキング許可費(マウイストへの私的通行税を含む)13,200円、カトマンズ観光費6,600円、その他(日本食調味料、タイ出国税、ネパール入国ビザ、お別れパーティーなどの費用)約4万円、総費用概算は約30万円弱であった。

標高4,610mのスルジャクンド峠越え


4.コース

今回のトレッキングの起点スンダリジャルは、さきに述べたごとくカトマンズ市街から北に向かって一番近いトレッキング道路の入口だ。公共バスの終点でもある。トッレッキングの全体ルートはYの字を逆さにして左側がスンダリジャル、Y字の分岐はタレパティ、ここから先の聖地ゴサインクンドが今回の最終目的地、さらに進めばランタン谷に至るがわれわれはゴサインクンドで引き返し、同じ道を分岐点のタレパティまで戻り、そこから逆Y字の右側のルートをとおり、トレッキングの終点メラムチバザールに出る。
コースの詳細はTNさんが作成した資料をご参照ください。


霞んで見える右奥の山間がチソパニあたり


5.サポート態勢

われわれ参加者10名の快適で安全なトレッキングを支えるため、20名の現地人が行動をともにしてくれた。日本語の堪能なガイド1名(パサンシェルパ氏)とシェルパ4名はわれわれと一緒に歩き、疲れたひとのデイバッグを担いだり、段差のある不安定な足場での手助けをしてくれるほか、食事時のサーバーにもなる。ポーター9名は参加者の寝袋、着替えの下着・洋服などを入れた10kgの大型ザックを運んでくれる。シェフを含むクッカー6名は3度の食事を作るほか、食料、コンロ、燃料、なべ・釜、食器などを運ぶ。

ゴサインクンドのピークから望むガネッシュヒマール


6.コースの特徴と思い出すこと

今年は乾季の訪れが遅れているらしくカトマンズ空港に降り立ったときは雨、翌日のトレッキング初日は雲の層も薄くなり「雨があがってよかったね」と言い合いながら、スンダリジャルからの山道を歩き始めた。一時間半ほど歩いて11時に早昼を摂る。14時過ぎころから雲行きがあやしくなり、14時半から1時間本格的な降雨に見舞われた。トレッキング中に雨に降られたのはこのときだけ。16時チソパニ2215mのロッジに到着。夕食は19時から、昨年まで参加していたOHさん(女性)が今年4月進行癌で亡くなり彼女の冥福を祈り追悼した。

3日目はクツムサン高度2470m泊で4km3時間コース。午前中にロッジに着き、風もなく太陽が燦々と照り気持ちよい。洗濯・シャワーなどして各自ゆっくりした時間を過ごす。4日目からは高度3000mを超え、わたしなどは後頭部に軽い頭痛を覚える。高山病予防には水分をたくさんとり、利尿をうながすことがいいと言う。夜中3回ほど寒い屋外のトイレに行かねばならぬが、満天の星の輝きにしばし目をうばわれ立ち尽くす。毎日徐々に高度を上げながら5日目はタレパティ高度3510mとなった。この辺はラリー・グラス(シャクナゲ)の古木原生林だ。日本のシャクナゲと違い、背は高く5〜6mもあり幹も太い。

Y字の分岐点タレパティ 早朝のロッジ うっすらと雪化粧


7日目は今回のトレッキングの最難所、目指すは最終目的地、ゴサインクンド高度
4312mであるが、手前に立ちはだかるスルジャクンド峠4610mを越えなければならない。この日は下り300m、登り1000m、高度も高くなり、3800mを超える時点で、わたしはデイバッグをシェルパに預けた。峠のあたりは最近降った雪が融けずに積もっている。しばらくは雪道を歩く。いくつかの小さな湖の傍を通り抜けると大きな湖が眼下に見下ろせる。通り道の一角に聖水の流れ出る祠があった。まわり一面、五色の布を吊るした綱(ルンダルという)が無数に張られ華やいだ感じ。信者はここで身体をきよめシバ神に祈る。シバ神が眠る湖と信じられ、夏には多くのヒンズー教信徒でにぎわうそうだ。湖のほとりにゴンパ(僧院)や何軒かのLodgeがある。空気が薄いのであえぎながら、ゆっくりゆっくり歩き、15時すぎに全員ロッジに着く。太陽が出ているときは暖かだが日が沈むと冷えてくる。1リットルのペットボトルに熱湯を入れて、それを寝袋の中にいれて寝るが寒い。ここで連泊の予定を変更し、明日は午前中フリー、午後帰路につくこととし、1泊短縮した分を帰路のタルケギャン2740mで連泊することに決定。翌日朝、裏山のピーク高度差約200mを1時間かけて登りきる。北面いっぱいにひろがる白雪の山々が目に飛び込む。右にランタンリルン、左にガネーシュヒマール、感動の一瞬だ。スケールの大きさとこの感動はとうていカメラに収まりきらない。

聖者の池と言われるゴサインクンド湖 ガネッシュヒマール 7429m 

タレパティへ戻る道々うしろを振り返り、深い谷を隔ててはるか彼方に望まれる自分たちが歩いた経路を目で追いながら感慨無量のここち。毎日の一歩一歩の積み重ねが見える形で示され、改めて満ち足りた達成感を何度か味わうことができた。

10日目はタレパティ3510mからメラムチガウン2530mまで急な坂道を一気に1037mくだる。逆コースなら相当キツイ。ぜんぜん行きかう人に出合わない。まわりはラリー・グラスやヒマラヤ杉?の樹林帯が続く。

11日目12時半タルケギャン高度2740mに着く。広い緑の芝生、交代でシャワーが使える。みんな洗濯に余念なし。ティータイムのときロッジオーナーの居間でバター茶とお手製のクッキーが特別に振る舞われた。そのとき、たまたま同宿した地元TV局の人たちの取材を受けた。翌日はフリータイムで休養する人とオプションの山登りをする人に分かれた。村のすぐ傍に富士山とほぼ同じ高さのヤンリピーク3771mがあり、近隣の人々が1年に一度は家族でお参りする信仰の山である。頂上には古くからゴンパ(僧院)があったが数年前に雷の被害にあい、それに代わるものとして、大きくて立派な仏塔が建立された。完成の式典が昨日まで3日間続けられ、1万人のラマ僧や有力信徒が駆けつけたとのこと。前日まで仏塔に照明がつけられ、ヘリコプターも飛んでいた。

3771mに建つ仏塔の基壇にあがり記念撮影

頂上は祭りのあとの残材が散乱し、後片付けの人が働いていた。仮設の寝所も多数残されていた。昼食は、海苔と特製おにぎり、ゆで卵、ウリの糟漬けときゅうり、特別にヤクのヨーグルト。酸味がつよくさわやかな味、ヤクはオスでメスはナクと言うそうだ。ガイドのパサン氏が式典に従事した調理人から分けてもらってきたようだ。スノーキャップのランタン山群がここでも見えるはずであったが、残念ながら遠方の山々には雲がかかり見通せない。仏塔の基壇にあがり記念撮影をして下山する。高度にもなれ頭痛もせず動作も普通にできる。

14日目はトレッキング最後の日。シェルマタンからバスターミナルのあるメラムチプルまで16kmの山道を歩きとおす。高度差は1720m、午前中はゆるい下りの歩きやすい山道であったが、午後からはかなりキツイ下り道、最後の休憩地点から、はるか下方にメラムチ川とインドラワティ川の合流地点が見え、そこがメラムチプルだ。長いつり橋を渡り16時過ぎ、やっとお宿に着いた。歩数計を見たら37800歩、一日の歩行数としては最大を記録。夕食後はポーターやクッカーたちとのお別れ・打ち上げパーティー、衣類や学用品のお土産をみなさんに差し上げ、お酒と踊りで盛り上がる。22時散会、ここの高度は880m、さすがに暖かい。寝袋を広げからだの上に掛けて、ぐっすり翌朝まで安眠した。

チソパニにて出発前の集合 朝 出発前のストレッチ体操


7.ネパールトレッキングのお勧めと感謝

梅津さんが企画するネパールトレッキングは、回数をかさね経験をいかして周到に準備され、毎回同行する信頼できる現地ガイドのパサン氏と相談されて、われわれ高齢者でも無理のない日程とコースで、今回もほぼ予定の時間で、全員無事に歩きとおすことができた。今回のトレッキングは尾根歩きが多く、殆んど毎日のように白雪の神々しい山々を、宿からあるいは歩行中のどこかで見かけた。寒さや高山病の前駆症状(個人差があり、わたしは弱い方)に悩まされもしたが、連日深い山々の懐に抱かれ歩く充実の日々、終わってみれば至福の日々の懐かしさが胸にこみあげる。出かける前はちょっぴり不安もあった身体の不調も不思議に回復した。梅津さんをはじめ参加者のみなさん、そしてパサンさんや現地サポーターの方々には大変お世話になった。この場をおかりし心より感謝します。興味のある方、梅津さんのつぎの企画に参加しませんか。お勧めします。その節は梅津さんか参加者に声をかけてください。私自身も諸般の事情がゆるせば、元気なうちに、またご一緒したいと思っている。


(LSC会報誌 2007新年号に投稿したものを一部加筆)

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