ISLAM   〜ムスリムとして知っておくべきこと〜

『預言者ムハンマドの兄弟 イマーム・アリー 』

ムハンマド・ジャワド・シューリ


  第一部   預言者時代のイマーム・アリー

   8章 バドルの戦い


バドルの戦いはイスラームの運命を決める最も重大な戦いだった。
新しい信仰の従者にはじめて与えられた大きな試練となった。 イスラームの勢力はまだ初期の段階にあり、多神教徒軍が勝てばイスラームは消滅しかねない状況にあった。 預言者ほどバドルの戦いの結果がどれほど重要か認識していた人はいない。
開戦前、預言者がいかに不安を抱いていたかが祈りの言葉からわかろう。

「主よ、傲慢なクライシュ族がやって来ました。神の使徒に疑惑を抱いて。 ムスリム軍が消滅すれば、主を信仰することはできなくなります! 主よ、明日、彼らに屈辱を与え給え。」〈注1〉

多神教徒の軍隊には950人の兵士がいたのだが、ムスリム軍は(預言者を含めて)
わずか314人ほどであった。
イスラーム防衛には3つの守備陣地に共通した3つの要素があった。

(1) 預言者の資質、指導者性、並外れた確固不抜の精神。
     バドルをはじめ預言者が加わった戦いでムスリムの最終避難所は預言者だった。

(2) アリー・イブン・アビー・ターリブ率いるハーシム家(預言者の一族)の活躍は戦いの      始まりには不明瞭であったが、最後は並外れた武力で名声を得た。
     アリーの活躍ぶりはアラブ隊商の話題の的となった。

(3) 何百という教友は信仰心にあふれており、わが身を捧げる覚悟があった。
     大多数にとって殉教は生きることに等しく、勝利と報酬なのだった。
     イスラーム軍はこのような善良な教友で成り立っていた。彼らは防衛の第一線と
      して、難攻不落の要塞となり、預言者を守った。教友は攻防に優れた。

預言者の一族は預言者が真っ先に身を捧げるよう呼びかけた人びとだった。
出撃のときは先陣として第一線に立った。敵の攻撃に対して教友の誰もが戦った。
だが、一番の打撃を与えたのは預言者の一族だった。一族の活躍はバドルの戦いに
限ったことではなく、それ以後の戦いでも同じだった。

多神教徒の第一線に立つウトバ・イブン・ラビーアとその息子アル=ワリード、兄弟の
シャイバ(いずれもウマイヤ家出身)が果たし合いを求めて開戦した。
数百人の教友が預言者を囲み、預言者に呼ばれるのを待ったが、預言者が選んだのは彼の一族の者であった。 このような重荷を背負えるのは、それに耐えうる人だけである。

預言者が選んだ勇士はアリー、ハムザ、ウバイダ・イブン・アル=ハーリス(いずれも
預言者の一族)だった。アル=ワリードをアリーが倒し、ハムザがウトバを倒した。
シャイバと相打ちになったウバイダをアリーとハムザが助け、シャイバはすぐ倒れた。
バドルの戦いで最初の殉教者となったのがこのウバイダであった。

総攻撃が開始すると、何百人という教友が戦いに加わった。誰もが主の御悦びを求めて身を捧げた。 そのなかでも卓越していたのが預言者の一族だった。アリーの奮闘は特に優れていた。 アリーと相打ちとなったハンザラ・イブン・アブー・スフヤーンは、アリーが
剣を一振りしただけで血まみれになって倒れた。

アル=アウス・イブン・サイードもアリーが倒した。
それからアリーは「この日以降、おまえたちは神のことで反論すべきではない」と言い
ながらトゥアイア・イブン・ウダイを剣で突き刺した。
激戦となった時、預言者が一握りの砂を多神教徒の顔に投げつけた。
「あなた方の顔が醜くなれ。神よ、彼らを恐れさせ給え。彼らの足を弱め給え」
多神教徒はまっしぐらに逃げ去った。

ムスリム軍は多神教徒を倒し続けた。そして敵はムスリムの捕虜となった。
多神教徒の死者は70人。捕虜70人。この70人中、50人の名を歴史は記録している。 死亡した多神教徒の20人〈注2〉ないしは22人〈注3〉はアリーの手で倒された。

バドルの戦いはイスラーム国家の基礎を築き、アラビア半島の住民をあっと言わせた。
戦いの6割は312人の教友の功績だったが、少なくとも4割はアリーの功績だった。
このことを見落としてはなるまい。
見事な勝利の要因の根本にはアリーの奮闘があったといっても過言ではない。
教友が一人抜けていたとしても結果は変わらなかっただろうが、この4割の貢献が
なかったら、結果は異なっていたにちがいない。



注1:イブン・ヒシャーム『預言者伝』2巻、621頁。
注2:イブン・ヒシャーム『預言者伝』708‐713頁。
注3:アル=ワキディ 『Al-Maghazi』 (オックスフォード出版)1巻、152頁。




blue-a5.gif(1025 byte) 9章 ウフドの戦い       








































































































































































































































































































































































































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