ISLAM   〜ムスリムとして知っておくべきこと〜

『イスラームに関する質問 』

ムハンマド・ジャワド・シューリ


注:ウィルソン・H・グウェルティン(W)
     イマーム・シューリ(C)

   【質問15 預言者と預言者性の未来に関する情報】


W: ここまでは、クルアーンには予期せぬ未来を予言した二種類の節があるという
お話でした。一つがクルアーンに関する定め、もう一つがイスラームの未来に関するものでした。クルアーンには預言者の未来を予言した節がありますか?



C: 聖クルアーンには預言者ムハンマドの安全性に関する大変明確な情報が
あります。

「使徒よ,主からあなたに下された(凡ての)ものを,宣ベ伝えなさい。あなたがそれを
しないなら,かれの啓示を宣べ伝える使命は果せないであろう。アッラーは,(危害を
なす)人びとからあなたを守護なされる。アッラーは決して不信心の民を導かれない。」(5:67)

この節は、預言者ムハンマドがすべての人びとから完全に保護されていることを約束しています。この予言によればムハンマドの命を滅ぼすことができる人はひとりもいない。
もしも預言者が戦死あるいは暗殺されたりしていれば、この節は真実ではなく、預言者性は認められないことになります。

預言者が生きていたときの状況では、この予言は人間の予測とは反するものでした。
イスラームを公に宣言した後、預言者は世間から敵対されます。
メッカ住民の敵として槍玉に挙げられました。常に危険がつきまとい、何年も全く
保護のない生活を強いられていました。
彼の擁護者だったアブー・ターリブが亡くなると、神殿で巡礼者に説教する間の保護
さえなかったのです。

有力者らはムハンマドの暗殺を誓っていました。
逃げれば、生きていようが死体であろうが関係なく、ムハンマドを捕らえた者には
大きな報酬が用意されていました。
メディーナに移住するまでムハンマドには命の保障がなかった。
まだ飛び散る光でしかなかったイスラームはすぐに一掃されるものと考えられていま
した。

メディーナに到着すると戦いが始まり、ムスリムは激しい争いの中に放り込まれます。
ムスリムは常に、多勢に無勢の状態でした。メッカ人は砂漠の部族をムスリムと敵対
させました。さらには、非アラブ国の支配者たちは、イスラームに招待したムハンマドの
強力な言葉に猛烈に憤慨していました。
彼らを逆上させた預言者ムハンマドの言葉は次のようなものでした。
ビザンチン帝国のヘラクレスに向けたメッセージです。

「慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
偉大なるローマのヘラクレスへ、
アブドゥッラーの息子、神の使徒ムハンマドより。
イスラームに招待いたします。ムスリムになれば安全です。
貴方に神は二度の報奨をお与えになります。
しかし、背を向ければ、臣下の犯した罪の責任を負わされましょう。
啓典の民よ、私たちとあなた方の間の公平な言葉に近付きなさい。
私たちは共に神以外のものを信仰してはならず、神に無駄なものを並べては
なりません。全能主以外の神を立てるべきではありません。
しかし彼らが逃げるなら、『我らはムスリムであることを証言する』と申されよ」
(『預言者ムハンマドの一生』(第三版)ムハンマド・フセイン・ハイカル著 371頁より)

預言者はこのような危険にさらされていましたが、普通の生活を営んでいました。
護衛はなく、戦闘にも加わり、時には第一線で戦いました。
日が沈んだ後の町を一人で歩き、警備のない家で暮らしていました。
暗殺のチャンスは転がっていましたし、暗殺の企てが何度もありました。
色々な出来事からその例をお話しましょう。

ある時、預言者は一人、野営から離れた木の下で寝ていました。
そこへ剣を持ってやって来た敵兵ダスールの音で目覚めました。
敵兵が「ムハンマドよ、誰がお前を守るのか?」と声を上げたとき、預言者は「神」と
答えました。するとどういうわけかダスールは剣を落としてしまいます。
すばやく取り上げて、今度は預言者が剣を振りかざして言います。
「おお、ダスールよ、誰がお前を守るのか?」敵兵は「誰でもない」と答えたので、
預言者は「慈悲心を私から学びなさい」と言って剣を返しました。これに圧倒された
敵兵はムハンマドが真の預言者であることを悟り、イスラームに帰依しました。
(ワシントン・アービング著『ムハンマドの一生』18章より)

また別の出来事では、ムハンマドが何人かの従者と非ムスリム部族を訪ねたときの
こと。その部族長の豪邸のすぐ外で食事が用意されました。
騙されて招待されたことが預言者にはわかっていました。
食事に座ったところで狙われることがわかっていたのです。
屋根の上から落ちてきたひき臼につぶされるはずだった。
預言者は部族長の裏切り行為に気付かぬふりをして大急ぎでメディーナに戻りました。 (ワシントン・アービング著『ムハンマドの一生』21章より)

ムハンマドが戦場で味方兵士から見捨てられ、何千人もの多神教徒の敵の中に
置き去りにされたのは一度ではありません。敵の標的になるには絶好のチャンス。
容易に攻撃されていても不思議ではなかった。

ムハンマドが永遠に嘘を信じさせようとしていたのだったら、危害を受けずに守られるというような内容ではなく、 もっと真実味のある証拠になるような予言を選んでいたこと
でしょう。ムハンマドは神の保護を確信していた。その予言は実際に起きました。


W: クルアーンは預言者性の未来に関する情報を伝えていますか?


C: 預言者ムハンマドが最後の預言者であるとの宣告が預言者性の明白な情報です。

「ムハンマドは、あなたがた男の誰の父親でもない。しかし、アッラーの使徒であり、
また預言者たちの封緘である。本当にアッラーは全知であられる。」(33:40)

「封緘(ハータム)」という語は、文書や宣言内容の真正性を確証する封印を意味します。封印は最後の締めくくりにくるものです。 預言者ムハンマドは彼の従弟アリーに
語っています。

「私の後に預言者が現れないことを除けば、あなたは私にとって、ムーサー(モーゼ)にとってのハールーン(アロン)と同等の位置にある」

ムハンマドが最後の預言者であるという宣言は、実質的には未来の預言者性に関した情報なのです。 ムハンマドの死後、世界が預言者を目撃することはない。
神は人類にこれ以上預言者を御遣いにはならない。
すなわち預言者の長い歴史に終止符が打たれる。そういうことを伝えているのです。
このような予言は我々の期待に反するものです。
続けて神の預言者が遣わされると思うのが普通でしょう。
ムハンド以前に多くの預言者が遣わされているのだから、彼の後に続いたとしても
おかしくない。ムハンマド以前の人類の方がムハンマド以後の世代より神の教えに
導かれる価値があったなどということはありません。
現代の物質主義は現にムハンマドの時代よりはるかに酷い。
これまで以上に精神上の教えを必要としている。
預言者を遣わせるかどうかという要因は複雑で人間の知識を超越しています。
人類に預言者を遣わせるかどうかを神がどう決めるかは誰も知ることができない。
この知識は神のみにあります。


W: 普通、見事な予言では、ある時に起こる特定の出来事を扱っていますが、
この節の情報は一定の時間に生じる出来事ではありません。
これから何かが生じるということを伝えてはいません。
ムハンマド以降は預言者が現れないという否定的な情報です。



C: 肯定的情報を与える方が否定的情報よりはるかに簡単です。
未来の情報ではなく過去を扱う情報の例を挙げましょう。
スミス氏は運転したことがあります、という方が、ジョンソン氏は一度も運転したことが
ありません、というより簡単です。肯定的情報である「スミス氏は運転したことがある」
が本当であるためには、スミス氏が一度でも運転しているのを見ていれば、その情報は
正しいのがわかります。
「ジョンソン氏は一度も運転したことがない」という情報が真実であるには、ジョンソン氏の過去をすべて見ていなければなりません。

未来の情報についていえば、例えば、50年以内にデトロイトから天才科学者が現れるとの予測は可能になります。50年以内にデトロイトから天才科学者が現れない、というよりずっと容易です。この情報を確かなものにするためには、過去にデトロイトに住んだ何百万という膨大な数の人びとに関する大変多くの知識を要しますが、私達の力に及ぶものではありません。

もっと幅広い予測を立ててみます。
50年以内にアメリカ合衆国または世界に天才科学者は現れないとします。
このような予測が不合理なのは明らかです。
世界に天才科学者が永久に現れないというような予測は愚かです。

預言者ムハンマドが最後の預言者だということに関しても同じです。
これは特定の国家の限定した未来を扱っているだけではなく、全世界の無限の未来を扱っています。 この世の終焉までにムハンマドの後に預言者は現れないと言って
いるのです。 ムハンマド本人は人間としてそのような未来を予想することはできません。これは人類の未来を唯一知っているところからの啓示です。

実際、この予言はその通りです。
世界ではここ13世紀の間に一人でも預言者が現れたといった証言はありません。


W: ムハンマドの後、自分が預言者だと主張した人たちはいました。
今世紀の人もあれば、まだ生きている人の中にもいます。
彼らの主張は預言者性の真実を揺るがしているのではありませんか?



C: 預言者だという主張はそれが証明されていなければ全く意味がなく、預言者性の真実に影響を与えません。 預言者ムハンマドの時代ですら実に大勢の人たちが預言者だと主張していますが、その中に証明できた者はいませんでした。 大多数は嘘が証明
されており、主張者が死ぬと同時にそのような主張は消滅しています。
証明できていないという事実自体が、[預言者ムハンマドが封緘の預言者であることの]予言が真実であることの証拠でもあります。


W: しかし、過去13世紀に預言者が出現していないからといってそれが預言者の終焉の決定的な証拠にはなりません。 過去の空白が今後人類に預言者が出現しないことを意味しているわけではありません。将来、預言者が現れたとすれば、 封緘の預言者という宣告は本当ではないことになります。


C: 預言者ムハンマドが生きていた間は他にも預言者が現れる可能性は十分ある。
彼が封緘の預言者だということは明白ではなかった。
彼が死去してからの二、三世紀の間も同じでした。
しかし、千年が経過して預言者が他に現れるというのは可能性として少なくなりました。 ムハンマド以前の預言者が出現した時間的間隔は千年といわず七百年も経っていません。アブラハムとモーゼの間はわずか四百年ですし、モーゼとイエスの間には何百人という預言者が現れています。イエスとムハンマドの間は六百年も経っていません。

預言者の必要性は常にあります。
人類が導きを必要としているのに預言者が千年以内に現れないのは非常に珍しいことです。このことから、 長い間の空白と預言者ムハンマドが封緘の預言者であることにはある関係が成り立つのがわかる。 封印としての預言者ムハンマドと、これだけ長いこと預言者が現れていないことの関係は明らかです。
13世紀以上の時の経過が予言の真実性をいっそう確かなものにしています。
この予言が古くなればなるほど、真実はさらに明白になります。
この宣告は真実なのかそうではないのか。
このような合理的疑問を抱く段階は過ぎています。
未来の預言者出現の可能性を今では否定することができます。


W: 預言者はもっと現れるかもしれなかったが、その可能性は以前にも増して低く、
今後はないといえる。これに同意しましょう。
では、ムハンマドの死で預言者性が完結した理由が知りたいです。
人類は今も精神面における導きを必要としています。
現代では物質主義がさらに強まり、実際、これまで以上に導きを必要としている。



C: 私には預言者性の完結の理由をはっきり断言できませんが、預言者ムハンマドの普遍性が理由といえるかもしれません。彼以前の預言者はみな特定の共同体や国家に遣わされています。イスラエルの預言者たちはヘブライ人に遣わされました。
全人類に遣わされた預言者はいなかった。福音書によると、偉大なるイエスですら、
「私はイスラエルの家の迷った羊に遣わされた」と言っています。

ムハンマドだけが特定の共同体ではなく全人類に遣わされた普遍の預言者でした。
聖クルアーンはこう語っています。

「言ってやるがいい。『人びとよ、わたしはアッラーの使徒として、あなたがた凡てに
遣わされた者である。天と地の大権は、かれのものである。かれの外に神はなく・・・・・・』(7:158)」

普遍性に到達することで、預言者性は最終段階に達しました。
預言者が遣わされるのはこの段階で終わりなのでしょう。
教えは人類すべてに向けられています。
もはや人類は精神的導きに欠いてはいない。
導きはあらゆる国の、あらゆる人びとに与えられている。
人類に必要なのは、新たな導きではなく、すでに与えられている導きを受け入れることなのです。



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