COSMO POWER増刊・デスラー砲、その開発と運用

 

 

(1)序・波動砲発射公試

 

それが発射されるやいなや、その進路上にある全てをあまねく白銀の世界に包み込み、虚無の時空へと押し流してしまう兵器、波動砲。

私はそれを、A型主力戦艦(白色彗星戦役時の主力戦艦)の一番艦ドレッドノートの発射公試の時に、初めて体験した。

眼前に展開されたあまりの光景に、艦橋にあった者は誰一人として声がなかった。

唯一の例外が、波動砲発射公試の際に砲術長(当時は砲術科の担当であった)を勤めた南部中佐であった。

元ヤマト砲術長である南部中佐は、ドレッドノート艦橋の中で唯一の波動砲体験者であったのだが、彼の得意気な顔は忘れられない。

 

同時に、彼の言葉も忘れることが出来ない。それは私が彼と喫茶室でコーヒーを飲んでいる際のことであった。

「大佐。ヤマトはイスカンダルへの旅路で波動砲を5回しか発射していません。それも敵艦に向けて発射したのは、ご存知でしょう? ただの一度きりなんですよ」

この言葉の奥に隠された真実に気づいた私は、愕然とせざるを得なかった。

 

本稿はガミラスにおける波動砲、デスラー砲について執筆するものである。

造船部に身を置いていた私がどうして波動砲について著述するのかご理解頂けないことがあるかも知れない。

波動砲に限っては従来のように造兵部単独での開発は不可能であった。

この船体そのものを砲身として用いる未曾有の兵器については、造兵部と共に造船部、機関部が一致協力して開発したのである。

従って造船部にあった私でも、波動砲についてはある程度のことを語る資格があるものと思う。

 

 

(2)技術的敗北・その1

 

波動砲、それは地球人が手に入れた有史以来最強の兵器である。

おびただしい血の代償と引き替えに手に入れたガミラス・デストロイヤー、その中でも波動エンジンの入手と解析が、波動砲開発の最大のきっかけであった。

波動エンジンの動作原理さえつかめてしまえば、波動砲の理論そのものはいたって簡単であった。

簡単であったが故に、ガミラスがこの兵器を実戦配備しているのではないかという疑念を、我々は当初から抱いていた。

結果としてヤマトはイスカンダルから帰還し、地球人類は生き延びることを許された。

 

ヤマトがもたらした情報を解析した我々艦船技術本部員は、最大の懸念事項を真っ先に真田技術大佐に尋ねた。

真田技術大佐は技術部員をヤマト艦内の作戦会議室に集め、デスラー総統の座乗する旗艦戦艦との戦闘の模様の一部始終を見せてくれた。

モニターが白一色に染め上げられた時、呻き声が静かに、そして大きく、蝟集する技術者たちの喉から漏れた。

そう、ガミラスに波動砲はあったのだ。

この事実に対する驚嘆以上に、我々は技術的敗北に打ちのめされていた。

確かにヤマトは帰ってきた。

ガミラスとの生存競争に打ち勝つことが出来た。

しかしガミラスの技術には遂に勝つことが出来なかったのだと、我々ははっきりと悟ったのである。

 

 

(3)技術的敗北・その2

 

ガミラスによる波動砲の評価として、デスラー総統の自伝「戦」(訳題「デスラーズ・ウォー」)巻6・第3章を挙げよう。

 

「バルゼー艦隊の突撃を波動砲の一斉発射によって葬ろうという目論見は崩れ去った。

ノムドラムは決着がついたとばかりの表情で、フラーゲはいつものように波動砲ごときで戦に勝てるものかと言い捨てた。

私は水雷提督の言葉を心強く感じたものだ。

だがヒジカタは優秀な武人だった。彼は己の持つ決戦兵器に限界があることをよく心得、作戦面においてこれに全面的に依拠することはなかった。

火炎直撃砲の洗礼を浴びるや、彼の行動には決戦兵器の資格を失った波動砲に対する拘泥は最早一片も感じられなかった。ヒジカタは冷静沈着に艦隊を反転させた。バルゼーは追撃戦に移る。

この瞬間、私の心は躍った。

何と楽しい戦であろうか。

バルゼーから勝機が消えたことが私にはわかった。バルゼーごとき野蛮人にヤマトが撃沈される心配は今や杞憂となったのだ。私はヒジカタの才覚に感謝した。

傍らに控えるタランに祝杯を用意させると、私は訊いた。『君にはあのような戦が出来るかね』

タランの答えて曰く『ご命令とあらば』

タランは何につけ固い男であった。

ドメルであればきっと私を楽しませてくれたことであろう。つくづく惜しい漢を亡くしたものだ」

 

この中でデスラー総統は直接的な言葉を用いてはいない。

だが拡散波動砲を「劣った兵器」であると考えていたことは疑いようがない。

その通り、地球防衛軍の戦艦に搭載された波動砲は、実は不完全な兵器であったのだ。

 

 

(4)技術的敗北・その3

 

しつこいようだが、もう一度デスラー砲がヤマトを襲った場面を引き合いに出そう。

今度は太田健二郎著「奇跡は起こった」、「デスラー襲撃」の章からの抜粋である。

 

「パネルにアラームが点灯したのを視界の隅に捕らえ得たのは幸運以外の何ものでもない。

その時の私の声は裏返っていたのではないだろうか。

何を叫んだかも覚えていない。情けない話であるがそれくらい私は動転していた。

後で南部に訊いたところ、私はこう叫んだようだ。

『強力なエネルギーがやって来ます!!』

地球を目前にした森くんの死を悼み感傷に浸っていたヤマト艦橋の雰囲気は一変した。

島さんは緊急回避を命じるが、ヤマトの動きはあまりにも緩慢だった。

エネルギー反応の正体はわからない。しかし私をはじめヤマト首脳部の脳裏に等しく過ぎったのは、往路における冥王星基地攻略戦の一コマであった。

これは反射衛星砲、あるいはそれに匹敵する恐ろしい兵器ではないのか、と。

その時であった。真田さんが彼のコンソールに設えてあったあの変なスイッチを弾いた。

艦橋内の照明が一瞬にして非常灯に切り替わる。

と同時に、艦橋の天井が淡く光り輝き始めた。

ヤマトの船体自体の発する光が天井を染めていたのだと理解したのは、全てが終わってからであった」

 

太田健二郎氏は当時のヤマト航海士である。つまりこれは当事者による回想だ。

この描写は大変重要な事実に言及している。

太田航海士は、深宇宙探査パネル内にエネルギー反応を見ているが、デスラー艦の反応は見ていない。

後にヤマトの記録を調べてもこの回想は正しい。

つまりこの描写は、デスラー砲という兵器が当時のヤマトが装備していた各種センサーの「探査圏外からの正確な狙撃」が可能であったという事実を浮き彫りにしているのである。

 

 

(5)技術的敗北・その4

 

ヤマトに搭載された波動砲は不完全な兵器であった。

テストが間に合わなかったことを指しているわけではない。

ヤマトに搭載された波動砲にせよ、アンドロメダなど第二世代戦艦群の持つ拡散波動砲にせよ、結局は不完全な兵器であったのだ。

地球技術陣は、波動砲の集束率の向上という壁に阻まれていたのだ。

 

ヤマトの波動砲は発射されるとやや漏斗状に広がって直進する。拡散波動砲や爆雷波動砲は更に掃射面積が大きい。

このように波動砲の集束率を低めることはいくらでも出来た。

拡散波動砲や爆雷波動砲の開発と配備が比較的短期間に成された事実を見ればわかる。

一方デスラー総統の旗艦戦艦が放った波動砲、いわゆるデスラー砲は、ほとんど拡散せず一本に集束されていた。

これはつまりガミラスの波動砲制御技術が、地球のものよりもはるかに優っていたことを示している。

地球技術陣が目指した波動砲の理想の姿はまさにここにあった。

集束率を高められれば同じ出力でも射程の延伸が望める。破壊力も増すだろう。

少なくとも射程の延伸ははっきり証明された。

デスラー総統の旗艦戦艦がデスラー砲を放った位置は、地球防衛軍の現在の最新鋭戦艦でもようやく互角という程の距離である。

しかもデスラー旗艦戦艦と比較するに地球戦艦の何と大きいことだろうか。

 

ここまで書けばデスラー砲が波動砲に比べいかに完成度の高い兵器であったかおわかりだろう。

デスラー総統の「劣った兵器」という認識は正しい。

その自信の根拠たる客観的事実を我々はまざまざと見せつけられた。

我々がヤマト作戦室で目の当たりにしたあの記録が、どれだけ我々技術陣を打ちのめしたか。

そうだ。我々地球人技術者はあのデスラー砲のような見事な集束率を、波動砲に与えることができなかったのだ。

巷間には波動砲は万能兵器であり、デスラー砲よりも強力だったという無責任な話がまことしやかに流れている。

しかしそれはヤマトやアンドロメダなどの残した奇跡的な大戦果によって生み出された幻想に過ぎないのだ。

 

 

(6)タキオン砲・その1

 

ところで、波動砲に比べてはるかに洗練された兵器でありながら、デスラー砲はガミラスでは主武装であるとは言い難い。

ガミラスはデスラー砲をどのように認識していたのだろうか。これを明確にする必要があるだろう。

 

ガミラスの歴史を紐解くと、デスラー砲の歴史はさして古いものでないことがわかる。

デスラー砲は古くはタキオン砲と呼ばれていた。

一時期はガミラス弩級戦艦に搭載された時代があるのだが、比較的短期間で採用時期は終わっている。

タキオン砲は艦載兵器ではなくなり要塞砲に転用され、その後デスラー砲の出現まで艦載兵器としては不遇の時代を過ごすことになるのだ。

さて当時のタキオン砲搭載戦艦の「艦長心得」を覗き見ると、タキオン砲の特徴としてこのようなことが記されている。

 

「タキオン砲は破壊力が極めて大なりて、一個戦隊撃破も容易なり。

然れども運用には細心の注意が必要なり。

一つ、発射準備及び事後作業に多大の時間を要す。

一つ、掃射兵器なりて狙撃は不可なり。

一つ、有効射程は概して短なり。

タキオン砲性能細目は別表を参照すべし」

 

この頃のタキオン砲は、この心得から推すに、技術的には現在の地球防衛軍の波動砲と同レベルの完成度の兵器であったと察せられる。

しかしこの心得に、ガミラスと地球防衛軍との波動砲に対する認識の違いが如実に現れていることに気づくであろう。

ガミラスが宇宙戦艦の主武装としてタキオン砲を選択しなかった理由は後で詳述するが、この艦長心得の但書からは貴重な情報が得られる。

 

 

(7)タキオン砲・その2

 

但書のその1、「発射準備及び事後作業に多大の時間を要す」という点については地球防衛軍も認識している。

地球防衛軍はその間隙を埋めるべく様々な艦隊行動を立案しているが、今までの海戦が示しているとおり未だ柔軟な戦策が編み出せないでいる。

タキオン砲を整備し始めたガミラスもまた、同様な問題に突き当たっていたのことがわかる。

この問題は解決したのか?

 

但書のその2「掃射兵器なりて狙撃は不可なり」と、但書のその3「有効射程は概して短なり」という文言は、極めて示唆に富む。

まず但書のその2についてであるが、地球防衛軍関係者の持つ一般的な認識は、「波動砲は広面積の掃射に有効な兵器」というものである。

しかしこの長所として認識される特徴がこの頃のガミラス戦艦では欠点として認識されているのである。その理由は何か。

 

そして但書のその3、波動砲の射程が短いという指摘は、地球防衛軍関係者としては得心できない部分であろう。

もちろんデスラー砲と比較した場合の短射程という評価とは異なる。

ヤマトの場合、バージョン1の時点では波動砲の射程は衝撃砲の射程の倍であった。通常兵装に比較すれば十分に長射程だ。

A型戦艦であるドレッドノート級の場合でも、衝撃砲の射程はヤマトに比し倍増したが拡散波動砲自体の射程も延伸されているため、依然として波動砲の射程の方が長い。

ガミラス艦の通常兵器の射程は地球防衛艦隊に比較しては大して差がない。

だがガミラスは「射程は短い」と断じている。この根拠は何なのか。

 

 

(8)ガミラスのタキオン砲の評価・その1

 

まずはタキオン砲の射程から考えてみることにしよう。

 

ある新兵器の出現が、それを装備する軍に軍備や戦術の転換を強いる例は、古今東西枚挙にいとまがない。

例えばそれは鉄砲であり、航空機であり、核兵器であった。

地球防衛軍の場合もその例に見事に当てはまる。

波動砲の出現がその後の戦艦の構造を決し、波動砲搭載戦艦の量産は地球防衛軍の侵攻艦隊迎撃計画そのものを根底から覆してしまった。

 

転じてガミラスの場合はどうであろうか。

波動砲の出現が与えた影響の度合いは、地球の場合と全く異なる。

タキオン砲搭載戦艦は、ガミラスの主力たり得なかった。

ガミラス軍におけるタキオン砲の登場は、彼らの戦術の転換を強いることは出来なかったのだ。

この背景には、ガミラス軍には既に確固とした航空戦術が立脚していたためであると断定できる。

新たに登場したタキオン砲なる兵器は、それまでに確立していた空母機動部隊を中核とする航空機戦術に対し、革命的なアドバンテージを示すことが出来なかったのである。

 

ガミラスの想定する戦場は恒星系内であり、そこは大は惑星、小は彗星に至るまで、障害物が無数に浮かぶゴミの海である。

重力のせめぎ合いの中で深宇宙探査装置の性能は局限され、吸光性ガスの一群でもあれば光学探査すら無力になる。

しかもガミラスの場合、勝手知ったる庭であるサンザー太陽系、またはその周辺が戦場であるとは限らないのである。

進攻先が海図の不案内な恒星系での作戦である場合も少なくなく、想像もつかない天象・気象が敵となって艦隊の行動を阻むのである。

そのような戦場で、艦砲を主力とする艦隊がどの程度の力を発揮しうるであろうか。

なるほど、艦砲の威力は大きい。タキオン砲ともなれば小惑星の一群をすら軽く吹き飛ばす威力を示す。

しかし比較的射程の長いタキオン砲であっても、所詮は発射目標を直接捕捉できなければならないのだ。

まさにここに決定的な敗因があった。

航空機(と呼ばれる小型宇宙艇)は、プラットホームの隠蔽性と、そして攻撃可能距離において艦砲に圧倒的に優るのである。

 

しかしこれではタキオン砲が主力たり得なかったことは説明できても、タキオン砲そのものが排除された理由にはならない。

ガミラスにおけるタキオン砲の運用について別の角度から見る必要があるだろう。

 

 

(9)ガミラスのタキオン砲の評価・その2

 

地球防衛軍も不可避の命題として抱え続けている発射準備、事後時間についてはどうだろうか。

ガミラス兵器局技報2243号に、かつてのタキオン砲の発射時間短縮についてのレポートが掲載されている。

当時既に旧式となっていたタキオン砲に対する技術的回顧録の一種であるが、ガミラス技術者もタキオン砲の準備時間短縮について相当苦労させられたと記している。

特に興味を引く点は、用兵側の改善改良要求が列挙されていることであろう。

 

1位、再起動時間の根絶、もしくは劇的なる短縮(発射後に行動不能にならざること)

2位、発射準備時間の短縮(3分以内を目標とす)

3位、要すれば数回の連続発射可能なること

 

このレポートに接した時、私もかつての同僚たちも思わず苦笑した。

地球防衛軍と同様の悩みを抱えていたことが伺えたからである。

そしてガミラス側の優先順位が地球側のそれとやや異なる点も大いに我々の関心を集めた。

これによると、ガミラスの場合は発射後の行動不能時間の根絶を切実な問題としてとらえていることがわかる。

つまりタキオン砲発射後に「行動を起こさなくてはならない」わけである。

地球防衛軍の場合は波動砲は決戦兵器であり、発射と同時に敵勢力の大部を潰滅することを意味としている。

もちろん回避された場合は想定しているわけであるが、ガミラスの場合は回避されることが多いと考えているようである。

発射後に逆襲されるのを防ぐため、機関の全力発揮を要望しているのである。

 

技報によるとこれらに対する解決案は、もう1基の波動エンジンの搭載、コンデンサの大増設、タキオン砲の外部ユニット化などが提案されている。

面白いところではエネルギー供給船と言うべき専用の補給船を結合する案もあった。

これらの案のうちいくつかは実際に試作してみて実験に供されたようである。

そして全ての案において船体の大幅な大型化が避けられず、経済的でないことが判明して断念したと回想されている。

ちなみに補給船案は案の段階で流れたそうである。

荒唐無稽に過ぎたわけであるが、ガミラスの試行錯誤ぶりが伺えて興味深い。

 

話は逸れてしまったが、以上の回顧録を見てみても、時間の問題はタキオン砲に対する大きな悩みにはなっているが、致命的な欠陥にはなっていないようである。

従ってタキオン砲そのものが装備から外される要因たり得ないのは明らかである。

 

 

(10)ガミラスのタキオン砲の評価・その3

 

最後に残った、掃射兵器であって狙撃兵器ではないという指摘についてはどうか。

既に述べた通り、掃射兵器であることが望ましいかどうかという点については、地球とガミラスとで認識が180度異なる。

射程についての認識は、両者ともより長射程が望ましいことは明らかでここに共通性を見出せるが、掃射か狙撃かという認識だけは全く違う。

地球防衛軍は開発当初こそ集束率の低さに悩んだものであるが、実際の運用を見るに掃射を是とするように評価が変わった。

そしてなるべく広い面積を掃射することを目標に、波動砲の集束率をわざと拡散させる方向で開発を進めてきた。

拡散に伴う射程の短縮は、出力そのものの増強という力業で解決している。

一方のガミラスは掃射を否とし、集束率が低いと注意を喚起する文書を配布し、究極的にはタキオン砲そのものの排除にまで至っている。

波動砲を力業を使ってでも何とか実用に供しようという地球防衛軍に比べて、ガミラスの意外に淡泊な姿勢が際だつではないか。

 

思い返してみると、地球防衛軍のこれまでの戦いはすべからく母星防衛戦争であり、しかも未知なる異星系文明を母星域に迎えての生きるか死ぬかの殲滅戦争であった。

更に地球防衛軍艦隊は生まれて間もないという制約もあって、ことごとく寡を以て衆を制すことを強要された。

地球防衛軍が波動砲に拘る理由の一端は間違いなくここにある。

これに比べガミラスがタキオン砲を必要としなかった理由は、地球のようなヒステリックな戦争に追い込まれることがなかったからではないだろうか。

 

いや、ガルマン・ガミラスもヒステリックな戦争を戦っているではないかという意見もある。

対ボラー戦争だ。

ガルマン・ガミラスはボラー連邦との戦争で惑星破壊ミサイルを多用している。

この惑星破壊ミサイルは、数発撃ち込めば惑星と惑星上のなにもかもを灰燼に帰すことができる、巨大な破壊力を持つ兵器である。

しかしボラー連邦に対して直接的な怨恨を持つガルマン人将兵はともかくとして、ガミラス人将兵の間ではこれを絶滅兵器と呼び忌み嫌っているという事実もある。

ガルマン・ガミラスにおいてボラー戦争への厭戦気分が蔓延している要因の一つであることにも留意すべきだろう。

 

 

(11)ガミラスのタキオン砲の評価・その4

 

ガミラスの主戦術は航空機動戦術である。

では、広い宙域に彼我の戦力が入り乱れることが常識である彼らの戦場において、掃射兵器を投入する機会がどの程度あるだろうか。

実際はほとんどあり得ないと言って差し支えないだろう。

 

先に挙げたガミラス兵器局技報に、ある技術士官のタキオン砲についてのこんな回想が掲載されていた。

 

「ある作戦の時のことだ。壊乱に瀕した敵艦隊に接近した我が艦隊は、タキオン砲でとどめを刺そうとした。

戦艦戦隊にタキオン砲による掃討を命じた司令官のところへ、第二空母の艦長から緊急通信が入った。

空母の艦長はタキオン砲の使用を止めて欲しいと頼んだのだ。

司令官が理由を尋ねると、撃墜された爆撃機搭乗員がまだ戦場を漂流しているというのである。

敵艦隊を殲滅できる千載一遇の機会を目の前にしている司令官は迷った。

すると空母の艦長の横合いから搭乗員らしき下級士官が割り込み、とても上官に対するとは思えないような言葉でタキオン砲の使用を止めるようにと繰り返した。

漂流しているのは恐らく彼の大事な部下なのだろう。

司令官はようやくタキオン砲の使用中止を命じた。

しかしその命令は一足遅かった。戦艦戦隊はタキオン砲を発射してしまったのだ。

敵艦隊は殲滅できた。ただ、生きていたかも知れない爆撃機搭乗員もまた一緒に消え去ってしまった。

戦いには勝利したが、艦隊では誰もそれを祝おうという気分にはなれなかった。

自分はこの時ほどタキオン砲の融通のなさを呪ったことはない」

 

タキオン砲の使い勝手の悪さについてはガミラス軍内部から繰り返し改善要望が出ていたらしく、特に母艦関係者の間からの廃止要求は激烈なものがあったようだ。

何分後に射線上から待避しなければ命はないという戦艦からの脅しめいた通信を受ける立場になってみろというのである。

ガミラスでは航空関係者の勢力は大変強かった。

タキオン砲の廃止を命令した文書は見つかっていない。

しかしこういった流れの中でタキオン砲の装備がなくなっていったのだろうとは、容易に推測ができる。

 

 

(12)ガミラスのタキオン砲の評価・その5

 

さて、ここまでが純軍事的な面からの分析による結論である。

しかしもう一つ面白い説を紹介したい。

これは地球防衛軍大学のプロフェッサー・オオツカの提唱する説である。

 

プロフェッサー・オオツカが注目すべきであると主張するのが、ガミラス軍人たちの独特の気質である。

現在もガルマン・ガミラス内での民族同士の軋轢の一つとなっているが、ガミラス人たちは常に芸術を求める。

芸術性を発揮する舞台は五線譜の上でもケンバスの上でもワイングラスの中でも構わない。

名将の誉れ高いドメル将軍と副官ゲールの間の不仲は地球人の間でも有名であるが、彼らの衝突の主たる要因が芸術の趣味の相違に求められるとした論文は、ガルマン・ガミラス国内で相当に有力である。

ドメル将軍が親しい友人提督に宛てた私的な手紙の中で副官ゲールの絵画の趣味を激しい口調で罵倒しているくらい、その嫌悪感には激しいものがあったようだ。

このような説が有力視される程ガミラス人の感覚は繊細を極め、しかも妥協がないのである。

 

その芸術性の追求は、合戦図の上であっても同様であった。

航空戦術は周到な偵察とタイミングを見計らうことを要求される極めて精緻な戦術であって、指揮官の芸術感覚が求められると言っても過言ではない。

それを記録した合戦図はケンバスであるとも言えるだろう。その場合振るうべき筆は艦艇であり航空機である。

ある者は神経質なほどの筆致で絵の具を乗せ、ある者は大胆な筆捌きを披露するわけである。

そんなところにスプレーで無造作にペンキを吹きかけ合戦図を塗りつぶすような超前衛芸術のごとき超兵器が登場したとて、にわかに許容されるものであろうか?

それはないだろう。

如何に美しく勝利を得るかを競うガミラス軍人にとって、このような禍々しい勝利は嫌悪の対象になっていたに違いない。

タキオン砲はそういった芸術家軍人たちの感性に合致しなかったのであろう。

それどころか嫌われ、蔑まされ、消えていったのではないか。プロフェッサー・オオツカはこう結論づけている。

 

実に斬新な説であるが、奇抜珍妙とは言えない背景が存在する。

私は文化論にはからきし脳のない無粋な人間であるのでこの説の是非を断じることは出来ないが、傾聴に値する説であると感じここに紹介した。

 

 

(13)デスラー砲の登場・その1

 

こうして一度は艦隊標準装備から外されたタキオン砲は、要塞砲として細々と使用されていた。

しかしその裏では依然としてガミラス技術者たちによるタキオン砲艦載化への挑戦が続けられていた。

実験の課題は、いかにして次元波動の波及範囲を制御するかのただ一点であった。

しかし大して期待もされていな兵器ゆえ、予算にせよ人員にせよ供給される資源は限定されており、技術者たちは苦しい戦いを強いられていた。

 

やがてガミラス星終末説に起因する長期の政情不安に陥っていたガミラスに政変が起こり、デスラー軍事政権が樹立される。

総統位に就任したデスラーは移民計画を推進し、小規模な移民を繰り返して民族絶滅の危機を分散させることに努めた。

ここに一つ問題が発生した。

移民星の激増に対して警備艦隊の増強が追いつかなかったのである。

国力のほぼ全力を移民星探索用の標準型巡航艦の建造に振り向けている状況で、新たな艦隊など編成している余裕などガミラスには残っていなかった。

量的劣勢は質的優勢で補おうとするのが常であるが、ガミラスもまたその前例を踏襲する。

なるべく資材と人員を消費しない戦力強化策が求められたのである。

艦隊強化策として搭載航空機の機種改変や瞬間物質移送機の開発が督励され、移民星防衛用としては費用対効果の大きい超大型ミサイルや反射衛星砲の開発と配備が進められた。

防衛兵器としてのデスラー機雷の開発もこの時期の大軍拡の中で行なわれている。

この流れの中で、タキオン砲に転機が訪れた。

威力のある防衛兵器としてタキオン砲が注目されることになったのである。

 

防衛兵器としての運用であるので、本来であれば宇宙要塞を建設してタキオン砲を装備したいのであるが、新たな要塞を建設することは資材面で絶望的であった。

そこで、必要資材の少なくて済む艦船への搭載が再び検討され始めた。

しかし艦載兵器としては依然として集束率が問題視されていた。

防衛側としてはあらゆる兵器を有機的に運用しなくてはならない戦場において、排他的な運用しかできないような兵器ではあまりにも困るという意見が依然として強く残っていたからである。

ガミラス兵器行政は直ちにタキオン砲の集束率改善というテーマを国防上の重大問題の一つに掲げることとなる。

ガミラス兵器開発局のタキオン砲改良班の組織は大幅な改革と共に増強され、予算も資材も必要なものは次から次へと投入された。

飛躍的に強化されたタキオン砲改良班の技術者たちによって理論の検証と実験が繰り返し行なわれた。

そして数年を経ずして、遂に長年の課題であったタキオン砲集束制御技術の開発に成功したのである。

 

 

(14)デスラー砲の登場・その2

 

改良タキオン砲の発射実験には、当時移民計画推進において顕著な成功を収めますます権勢盛んであったデスラー総統が臨席したと言う。

旧式弩級戦艦から放たれた改良タキオン砲の集束率は極めて良好で、同程度のパワーユニットを用いた従来型のタキオン砲に比べて有効射程において2倍の延伸を果たしたのである。

これだけの精度があれば、従来の艦砲と同様な使用法が可能と判断された。彼我が接近している状況においても支援射撃に使えるというわけである。

この成果を高く評価したデスラー総統は、改良タキオン砲の生産を命じた。

改良タキオン砲はこの頃の時世を反映して救国兵器、即ちデスラー砲と通称されるようになったのである。

しかしデスラー砲を主武装とした艦艇を生産することは認められなかった。

重複するが、時局柄の標準型巡航艦や移民船の建造整備が最優先課題となっており、艦船建造線表に新艦艇を割り込ませる余裕などなかったのだ。

このため標準型巡航艦の建造ペースは揺るぎも見せていない。

移民先の惑星の発見という最大の目的を達成するための最重要手段である標準型巡航艦の数を減ずるなどという不見識は、デスラー総統の中にはなかったのである。

 

では、デスラー総統が生産を命じた改良タキオン砲、即ちデスラー砲とは一体どのようなものだったのか。

デスラー総統は既存艦艇に対するデスラー砲の増備の可能性を検討させていたのである。

改良タキオン砲の試験の際はタキオン砲をもともと装備していた旧式戦艦に対して換装という形で装備したため、装備についての工夫は必要がなかった。

しかしタキオン砲を装備していない既存艦艇に対する増備という形となると、タキオン砲をユニット化する必要が生じる。

それでもデスラー砲外部ユニット化の開発は順調に進んだ。

地球にとって幸運だったのは、このデスラー砲装備型の戦艦空母がヤマトの前に立ち塞がらなかったことである。

これはデスラー砲ユニットの配備が、期待の新鋭艦であった戦艦空母など一部の例外を除いて、辺境移民星に優先して行なわれたためである。

この点でもデスラー総統の判断は一貫していた。

ガミラスの誇る機動打撃部隊の質は極めて高く保たれており、差しあたり新兵器であるデスラー砲の配備の必要性は感じられていなかった。

それよりも量的に問題のある移民星警備艦隊の質的強化にデスラー砲を用いたのである。

しかしそのことが結果的にガミラスの破滅を招く遠因になったとは運命の何と皮肉なことであろうか。

間に合わせで取り付けたヤマトの「不完全な」波動砲の直接的間接的脅威によってガミラス機動部隊はことごとく退けられ、あまつさえガミラス本星すら波動砲によって根幹を打ち砕かれてしまったのである。

 

 

(15)デスラー砲艦への道程

 

デスラー砲を主武装とする新型艦艇の生産は禁じられたとは言え、設計そのものは着手されていた。

そのテストベッドとして選ばれたのが、デスラー総統の緊急脱出用小型艦であった。

ガミラス星の緊急事態に備えて高速脱出を意図していたため、この小型艦の波動エンジンは船体に対して不釣り合いなほど強力であった。

また艦隊によって護衛される、もしくは脱出後に旗艦を移すことを前提にしていたため、武装は乏しくそれゆえ艦内容積には余裕があった。

脱出用デスラー旗艦戦艦は、外部増備型のデスラー砲ユニットではなく内蔵固定装備型のデスラー砲が追加されたのである。

この改造工事は比較的早い段階に終わっていたと言われるが詳細はつまびらかではない。

 

また完全に設計をやり直したものが、白色彗星戦役時にデスラー総統が座乗していた大型戦艦である。

この艦はデスラー砲を装備することを前提に設計された最初の艦である。

2代目デスラー戦艦として知られるこの大型戦艦の装備するデスラー砲は、出力そのものは地球防衛軍A型戦艦に劣るのに対し、射程はこれを凌いでいた。

細かいデータはないが、現在の地球防衛軍新型戦艦に比べても優勢である可能性が高い。

その長射程で地球防衛軍を驚嘆させた白色彗星帝国の秘密兵器・火炎直撃砲よりも更に射程が長いであろう。

その反面、2代目デスラー戦艦はデスラー砲キャリアとしての性格が強く、通常兵装はそれほど強力ではなかった。

少なくてもヤマトやアンドロメダなどの戦艦と撃ち合うことは想定してはいない。

この辺に、後のガルマン・ガミラスのデスラー砲運用思想に繋がる萌芽が見て取れて大変興味深い。

一種の実験艦であったこれらデスラー戦艦や、後に合流して得た各地の移民星警備艦隊の運用成績を吸収し、ガミラスはデスラー砲運用の基礎を固めていったのである。

 

ちなみに初代のデスラー戦艦はヤマトに対しデスラー砲を以て挑戦したが、ヤマトの真田工場長の機転によって撃沈された。

2代目デスラー戦艦もヤマトが挑んだ接舷戦闘によって破壊され、失われている。

この2代目デスラー戦艦は使い勝手が良かったらしく、デスラー総統はガルマン・ガミラス建国後にほぼ同じ設計の艦を建造している。

都合4代目に当たるこのデスラー戦艦は、ディンギル戦役時に地球同盟軍として参戦した時に我々の前に姿を現している。

3代目デスラー戦艦については後述する。

 

 

(16)デスラー砲艦・その1

 

ガルマン星解放以後、ガルマン・ガミラス帝国を建国してボラー連邦との星間戦争に臨んだデスラー総統は、遂にデスラー砲を主武装とする新型艦船の建造に踏み切った。

地球付近にもその姿を現したので比較的知られているであろう、デスラー砲艦である。

ほとんど自航式デスラー砲とでも呼ぶべき単能艦であり、その徹底ぶりは艦容を見るだけで明らかである。

外観は2代目デスラー戦艦を概ね踏襲しており、サイズも大差ないが、瞬間物質移送機の装備は省かれている。

その他の兵装は、2代目デスラー戦艦ほど徹底して省略されてはいないが自衛用の火器が中心であって、固有の戦闘力は極めて低い。

重力スタビライザが格段に強化されるなど安定性の獲得には格別の努力が払われており、デスラー砲発射時に弾道がぶれるという心配はこの艦に限っては全くない。

 

ところでなぜガルマン・ガミラスは専用のデスラー砲艦を用意したのだろうか。

全ての戦艦が波動砲装備艦であることが常識となっている地球人には、やや理解しがたいところがあるかも知れない。

以前挙げた、タキオン砲装備戦艦の艦長心得の内容を思い出して欲しい。

3つの注意事項のうち2つは解決したが、残る1つはデスラー砲になっても解決を見ていない。

いくら精度が上がり射程が伸びたと言っても、デスラー砲の発射前後に発射艦の行動が制限される宿命は変わっていないのである。

 

これではデスラー砲の攻撃が成功しても、敵艦隊の動揺につけいる機会を自ら逸することになる。

また、初代・2代デスラー旗艦戦艦は、2隻とも行動できないところを攻撃され、喪失に繋がっている。

威力は抜群だがイチかバチかの賭けのような運用しかできないのは、兵器としては問題がありすぎる。

デスラー旗艦戦艦やその他警備艦隊の戦訓を研究した結果、デスラー砲の威力よりも主力艦の保全を選んだ。

ガルマン・ガミラスは戦艦に常に行動の自由を与えること、またドックや艦隊泊地の問題から艦型をいたずらに大型化しないことを求めたのである。

これらの観点からガルマン・ガミラスではデスラー砲を主力艦には装備しないことを決し、戦艦とは別に専用艦を準備した方が有利であると判定したのである。

 

 

(17)デスラー砲艦・その2

 

「戦艦とは別に」という計画方針は、艦隊編成にまで影響を及ぼしている。

通常編成の機甲艦隊や機動艦隊には配備されておらず、デスラー砲艦は単一艦種で一個艦隊を編成しているのだ。

艦隊レベルで艦種が単一に統一されている例は非常に珍しい。

通常編成の機甲艦隊が、主力戦艦や水雷戦隊の混成部隊として存在し、総合力を発揮しようとしているのと好対照である。

現在の編制では、親衛第6、親衛第13、親衛第18艦隊、及び第101〜第105機甲艦隊がデスラー砲艦隊である。

一個デスラー砲艦隊は、甲編成の場合デスラー砲艦120隻で構成されている。

乙編成は90隻で、現在編成途上の第105機甲艦隊が乙編成艦隊である他、戦闘により大損害を被った親衛第18艦隊が臨時に乙編成とされている。

何にせよ、編成表上は8個艦隊930隻というその数を見るだけでもガルマン・ガミラスの保有する軍事力の強大さがうかがえる。

地球防衛軍波動砲搭載艦の総数をはるかに超える規模だ。

デスラー総統の直率である親衛艦隊はともかくとして、第101機甲艦隊以下の5個機甲艦隊は方面艦隊に付属する。

方面艦隊司令長官の令により軍隊区分され作戦に参加するのである。

 

このデスラー砲艦の運用法であるが、現在の地球では「艦隊随伴型の長距離支援射撃を主任務とした支援艦艇」と解説を付されるのが一般的である。

デスラー砲艦の計画経緯には、確かにこのような目的が存在した。本来長距離支援射撃に使用するつもりであったことは間違いない。

しかし現在ではこの解説は不適切である。

現在のガルマン・ガミラスでは、デスラー砲艦隊は艦隊戦闘には参加しないと定められている。

この戦策転換の背景には、瞬間物質移送機とこれを用いた機動戦術の飛躍的な発展が存在する。

つまりデスラー砲のような長射程砲と言えど、瞬間物質移送機を用いた戦法に比べればその効果範囲は局限されており、デスラー砲による支援射撃の必要性が薄れたのである。

艦隊戦闘では活躍の機会を失いつつあるデスラー砲艦であるが、必要性がなくなったわけではない。

それどころか現在も着々と増強が続いている。

では一体どのような場面で必要とされるのであろうか。

 

 

(18)デスラー砲艦・その3

 

デスラー砲艦はどのような局面で投入される兵力なのだろうか。

攻城砲と言えば一番理解し易いであろうか。つまり要塞攻撃に用いられるのである。

これはボラー連邦の宇宙要塞が特別強力なことに由来する。

重装甲と大火力、付属する支援艦隊、更には設置された地勢とで有機的に守られたボラー宇宙要塞に対しては、ガミラス伝統の航空攻撃も大きな効力は期待できなかった。

自然惑星に建設された要塞であればプロトンミサイルによる撃破も考えられたのであるが、全てが人工物でありしかもある程度の移動力を備えるボラー機動要塞に対しては、プロトンミサイルでは命中すら容易ではなかった。

この機動要塞と撃ち合うには、どうしても威力の大きく射程の長い艦砲が必要とされたのである。

 

通常の要塞攻略戦では、デスラー砲艦の包囲発射により目標要塞の抵抗力を削ぎ、装甲衝撃艦による陸戦隊の突入を助ける。

撃破が容易な場合はそのまま力任せに外部からの攻撃を続け、最終的にプロトンミサイルで要塞を粉砕してしまうことがあるようだが、実際はそれほど簡単なものではないようだ。

実際に要塞攻略に携わった例としては、あまりいい例ではないが、太陽系内においてデスラー親衛艦隊とボラー機動要塞とが交戦するという事例があった。

この際に参加したのは親衛第18艦隊である。

デスラーの旗艦戦艦とデスラー砲艦のみという極めて特異な要塞攻略専用の編成であったが、地理上の問題もあり近接戦闘を余儀なくされたガルマン・ガミラス艦隊は苦戦を強いられた。

本来ははるかに遠距離で対峙し大威力砲の応酬というのが常道であるが、120隻ものデスラー砲艦が美しい横隊を組みデスラー砲を咆吼させている様はまさに圧巻の一語に尽きた。

もっともそれだけの攻撃をほとんど意に介さなかったボラー連邦機動要塞の高度な防御システムにも驚かされたが。

 

地球側ではこの運用法は地球防衛軍に学んだのだと広く言われている。

つまり白色彗星に対する波動砲艦による一斉発射に倣ったと言うのである。

これはかなり手前勝手な言い分であり、ガミラスでは既にタキオン砲時代にこのような発射法が考案されていた。

ただ実際に使用する機会はなかったようで、ガミラスにおいても机上の戦法に過ぎなかったデスラー砲艦の対要塞一斉発射法を実戦において試したという点では、確かに地球防衛軍が先鞭をつけたとも言えるかも知れない。

 

 

(19)その他のデスラー砲艦艇

 

デスラー砲艦以外にデスラー砲を装備する艦種はあるのだろうか。

既に述べたように、ガルマン・ガミラス軍はデスラー砲を通常型戦艦に装備するという選択肢を捨てた。

従って通常艦艇ではデスラー砲の装備は極めて稀である。

旗艦としての権威づけのような形で戦艦空母や大型戦闘艦の一部が装備しているに過ぎない。

実戦での使用例も、敵放棄艦の処分や機雷源突破などの際の使用があるが、よほど待ち伏せに有利な戦場を除いて艦隊戦闘で積極的に用いたという例はほとんどない。

ところでこの権威づけの装備という背景であるが、デスラー総統の権威が極めて高くなり、デスラー総統の名を冠した兵器が単なる一兵器に止まらず、政治的意味合いを帯びてしまったことが影響しているようである。

デスラー砲搭載艦を拝領するということはこの上もない名誉なことであり、一部ではガミラス人のガルマン人に対する優越主義の象徴のごとく捉える現象も起きている。

心あるガルマン・ガミラス人は民族間の軋轢の原因になることを憂慮しており、デスラー総統に兵器名の変更を提議する向きもあると伝えられる。

 

他にデスラー砲が装備されている艦は、帝都防空軍団にのみ配備されている海防戦艦ぐらいであろう。

海防戦艦とは最近登場した新艦種で、ボラー連邦からの星間弾道弾迎撃用として計画され、デスラー砲を砲室内装備とした珍しい艦である。

用途からすると浮き砲台であり宇宙要塞に近いが、要塞に比べ比較的安価なこの種の艦船は多数配備が可能であり、防空圏の死角の穴埋めには有効である。

デスラー砲を軸線上固定装備とした従来の艦と異なり、旋回式露天砲室内にユニットを装備している点が最大の特徴である。

外見は久々に登場した内宇宙用円盤形で、黒色艦隊(ガルマン・ガミラス側でも同様の識別名で呼称されている)のプレアデス級戦艦に似ている。

移動力は求められていない代わりに水平方向・垂直方向の旋回を迅速に行なえるように設計されている。

装備する砲室式デスラー砲は単装2基2門で、前甲板と後甲板に1基ずつ据えられている。

最大仰角35度、最大俯角5度、射界は艦首尾線を中心に左右両舷に対して90度である。なお、艦の安定上同時発射は出来ない。

海防戦艦は宇宙要塞同様帝都防空圏内の外縁部に配置され、どこから現れるかわからないプロトンミサイルを発見次第、どういう対勢からであってもデスラー砲で狙撃できるように待機しているのである。

今のところ成績はいいようで、帝星以外の重要拠点に対する配備も検討されているようだ。

ちなみに第一次防空圏が突破された場合は反射衛星砲による第二次防空圏が控えており、防空ミサイルとスクランブルに頼った旧態依然たる地球防空に比べて実に充実している。

 

またデスラー砲ではないが、ガルマン・ガミラスの中型艦艇では高圧直撃砲という散弾銃のような短射程タキオン砲を装備している。

従来のタキオン砲/デスラー砲が混戦の際には使用できなかったのに対し、発想の転換を以て混戦域において使用の自由を与えようとしたものである。

タキオン砲ユニットを極小化旋回式にしたので、軸線以外の方向に対しても発射が可能であり、射程を抑えるために威力をかなり制限している。

従ってほとんど接舷状態の時は大きな威力を発揮するが、ちょっと離れるとほとんど効果がなくなってしまうという特徴を持つ。

例の冥王星事件(ダゴン艦隊事件)でガルマン・ガミラス艦隊とヤマトが交戦した際、ヤマトが比較的至近距離から高圧直撃砲を浴びているが装甲を破られることはなかった。

ボラー艦より地球艦の方が重装甲であるので、ボラー用に調整されていた高圧直撃砲では威力不足か距離がありすぎたのだろう。

着想が面白い兵器であったので艦船技術本部でも調査がなされたが、最終的に効果なしと判定されて研究は終了している。

 

 

(20)ガルマン・ガミラス機動要塞

 

艦砲としてのデスラー砲の配備はこうした経緯をたどった。

さて、勢いデスラー砲艦の話になってしまっていたが、本稿の主役はデスラー砲そのものである。

もう一方の系譜である要塞砲としてのタキオン砲はどうなったのであろうか。

 

白色彗星は別格として、イスカンダル救出作戦においてヤマトと共にガミラス艦隊が遭遇した黒色艦隊の移動要塞に異常な苦戦を強いられた経験から、デスラー総統は比較的早い時期から移動要塞の検討開発を命じていた。

恒星間航行能力を備える移動要塞は旧ガミラス島型要塞をベースに開発が進み、小惑星規模の要塞が完成するに至った。

要塞は大きさに何の制限も設けられないために、各種重火器が豊富に取りそろえられている。

ガミラス時代の要塞の主兵装はタキオン砲であったのだが、ガルマン・ガミラス時代の要塞はより長射程のデスラー砲が装備されている。

しかし艦隊と同じ兵器を装備していては宇宙要塞のアドバンテージは発揮できない。要塞は艦隊に比べより強力な兵器を持つべきであろう。

そこでデスラー砲を要塞砲に特化したのが、ハイパーデスラー砲である。

 

ハイパーデスラー砲は2門以上のデスラー砲を束ねて1門のデスラー砲のように運用する技術である。

タキオン粒子を用いた時空震は相互に干渉した場合振動が増幅されるという性質を利用したものだ。

時空震の到達距離と震度において顕著な増幅効果が見られ、単純なデスラー砲ユニットの出力強化以上の効力が望めるのである。

隣接していないとこの性質を発揮出来ないのが難点であるが、地球防衛軍でもアンドロメダ級の連装拡散波動砲においてこの現象が確認されている。

但し同期制御が大変困難であること、また時空震の発射体に及ぶ影響も大きく、艦載にするにはリスクが大きいのが問題とされ、現在に至るも連装波動砲の実用化は控えられている。

しかし宇宙要塞であれば、重量的・空間的にかさばる同期装置の設置にも問題がなく、質量面からも時空震に対する耐久力を具備する。

このため移動要塞に対してはハイパーデスラー砲が積極的に採用されている。

地球防空軍でも月面要塞ドーラに多連装波動砲の設置が進んでおり、他にも旧式化・陳腐化が著しい戦闘衛星の代替として軌道要塞が検討されており、これに多連装波動砲を装備しようとしているようである。

 

ところで艦に類別され、船型も艦のような外観を呈する新型デスラー艦(いわゆる3代目デスラー戦艦)にも、このハイパーデスラー砲が装備されている。

もちろん移動要塞並みの巨大船体だからこそ可能な技である。

この艦を初めて目の当たりにした時の我々地球防衛軍関係者は度肝を抜かれたものであるが、後に大きすぎて艦隊との連携に困っているという話を聞くに及び、どちらかというとデスラー総統始めガルマン・ガミラス政府の移動執務室であるとの認識を深めた次第である。

実際、前線視察のような軽い行幸の際にはデスラー総統は従来型デスラー戦艦を愛用しており、造ってはみたものの、という感が拭えないようである。

何事にもバランスというものが肝心のようだ。

 

 

(21)発射照準装置の謎

 

TVドラマ「宇宙戦艦ヤマト」を見ていて「おや」と思った点は星の数ほどある。

理由は様々で、違和感から来るものあり、嫌悪感から来るものあり、中には当時は機密に指定されていた事実が出ていて驚いたこともある。

そして最終話において、デスラー旗艦戦艦がヤマトに対しデスラー砲を発射するシーンが出てきた。

このシーンも「おや」と思ったシーンである。

だが今までのものと違い「私も知らない、実際はどうだったのだろう」という「おや」だった。

そのシーンでは、デスラー総統がデスラー砲発射のために対戦車ライフルのような照準装置を使っていた。

もちろんこれは番組制作者の考案したフィクションである。

ヤマトの波動砲発射照準装置からイメージをふくらませたのであろう。

「ガミラスの波動砲なのだ」と視覚的に訴えるには大変分かり易い演出であったと思う。

後の戦艦・巡洋艦ではともかく、ヤマトでは確かにトリガー式の照準装置を使っていたのだが、果たしてガミラスにおけるデスラー砲の発射照準装置はどうだったのだろうか。

今まで長々と解説してきたように、デスラー砲はガミラスにおいては一般的な兵装ではなかったので、地球防衛軍はその管制システムについて全く情報を持っていなかった。

 

その後長い間それを確かめる術もなく私もすっかり忘れていたのだが、先年デスラー新型戦艦の調査をしていた際に唐突に思い出した。

折しもガルマン・ガミラスとの軍事交流が開始されており、既に退役していたとは言え好奇心の塊であった私は、つてを頼ってガルマン・ガミラス武官との接触の機会を得た。

私は単刀直入に尋ねてみたのだが、残念ながら確たる回答は得ることができなかった。

デスラー砲とそのシステムはガルマン・ガミラスにとって軍事機密であり、おいそれと情報を漏らすわけにもいかなかったわけである。

 

ただ、かつての部下が面白い話をしてくれた。

彼はガルマン・ガミラスの戦史編纂官がやって来た時に応対したのだが、彼は映像資料のひとつとして例のTVドラマを提供したのである。

あんな娯楽作品を資料として提供するのはどうかと文句をつけたところ、彼は実物のヤマトそっくりに製作された艦橋と人員配置を視覚的に捉える上ではあのドラマは有用であるとひとしきり反論を試みた後、半ば確信犯的犯行であったことを自供した。

私が現役時にデスラー砲の発射システムを知りたがっていたことを知っていた彼は、地球側の想像であるあのデスラー砲発射シーンをガルマン・ガミラス軍戦史編纂官に見せたかったのだそうだ。

結果はガルマン・ガミラス軍人の大爆笑だったそうである。

恐らくはあのような芝居がかった大仰なシステムは採用していなかったのだろうと想像できる。もっと高度なシステムを使っているのであろう。

当然と言えば当然なのだが、私も彼もその結果がやや残念であったことは否定できない。

どこかであのTVドラマのようなものを望んでいた気持ちがあったのかも知れない。

いつか発射システムが公開される日が来たら、是非私も見たいと願っている。

 

 

(22)結・実験艦ワスカル

 

かつて白色彗星に艦隊を全滅され、ボラー連邦の機動要塞には大火力の応酬を目前に見せつけられ、ディンギル戦役においても移動要塞の前に完敗を喫した地球防衛軍は、現在有効な対宇宙要塞戦術を模索中である。

軍備の面でも、今まで通り戦艦搭載の波動砲を主軸とするのか、それともガルマン・ガミラスのように波動砲艦を分離整備すべきなのか、議論が戦わされている。

一部にはデスラー砲艦を購入してはどうかという意見さえあるが、デスラー砲の供与は丁重に断られているのが現状である。

 

今年初め竣工した波動砲実験艦ワスカルは、集束率を高めた波動砲ユニットを装備している。

拡散波動砲、爆雷波動砲と、掃射型波動砲を整備し続けてきた地球防衛軍は、ようやく波動砲の本来の可能性を探り始めたのだ。

ワスカルはデスラー砲と同程度まで射程の延伸を狙った画期的な実験艦である。

従来艦よりも姿勢安定・制御装置が強化されており、遠距離発射における命中率の維持を図っている。

 

発射公試の結果、重力スタビライザなど艦の安定性向上の目的は達せられたことが確認された。

しかし心臓部である長射程波動砲は、発射公試の結果いくつもの問題を露呈した。予定した集束率が達成されなかったのだ。

このため予定距離まで到達できず、終端部では拡散してしまい有効威力はなかった。

波動砲が未だ実験段階の未完成兵器であることが痛感させられる結果であった。

デスラー砲までの道のりは遠く、そして険しい。

 

波動砲という兵器の完成を見る前に退役せざるを得なかったのが残念でならない。

しかしガミラスの技術者たちは長期にわたる悪戦苦闘の末にこの問題を克服した。

地球人技術者にもいつの日かきっと解決出来るはずである。

そう願って筆を置くことにしよう。

 

(完)

 

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