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第5回 ACKid2010


16日(金)ヒグマ春夫(美術・映像)+宮田糸旬子(音楽)
     撮影:飯村昭彦

ACKidは異なるジャンルのアーティストが協働して舞台をつくり上げていく表現の試みです。

ヒグマ春夫(美術・映像)+宮田糸旬子(音楽)
2010年4月16日/キッド・アイラック・アート・ホール

     
左側の壁面に、幅3m程の梱包材が床まで垂れている。後方壁面にヒグマが撮影した写真がゆっくりスライドされることによって、公演が始まる。写真は岩の内部であったり、町の風景であったり様々である。
     
頭に点滅するライトを付けたヒグマが、舞台中央に立ち尽くす。やがて梱包材の前に座ると、後方壁面のスライドの速度が増す。ヒグマは梱包材と壁の間に入っていく。海の写真が後方壁面に小さく投影され、拡大されていく。
    
梱包材にも、認識できない映像が投影される。宮田はヴァイオリンを床に置き、弦を右指先で弾く。ヒグマは中で前を向いて立ち、両手を広げて梱包材を実体化する。後方壁面にはタイトルがつく写真が拡大される。植物の茎が瓶に映える「光背」。
    
宮田は左手でヴァイオリンを持ち、指で弦を弾きながら揺るがし、構える。写真は人だかりだけで対象が分からない「見えないと気になる光景」。右から左へ移動すると肩からヴァイオリンを外し、前に構えて軽く叩く。
    
写真はダンスを写した「点滅する蛍光灯の中で」。ヒグマは左手で梱包材を内側から、自己の方へ引き付ける。宮田はヴァイオリンを左手で持ち、提げながら弦を弾き、前に出てくる。右手で弓を揺らし、梱包材に近づく。写真は森の中から太陽を写した「斜光」。
    
宮田は梱包材を踏んで音を出し、前に戻ってヴァイオリンを構えて大きくボーイングする。ヒグマは壁に留められた一方を外し、梱包材に包まっていく。宮田はピッチカートに移行する。写真は、窓際に置かれた金の顔のオブジェを写した「眼球が飛び出した瞬間」。
    
梱包材側の映像は、ライブであった。ヒグマは壁に留められた他方も外し、完全に体を梱包材で覆う。写真は踏み切りを写した「座ったまますれ違う」。宮田はヴァイオリンを前に持ち、指で弾き続ける。写真は「だるい潮風」。

ヒグマは梱包材に包まったまま腰を下ろす。宮田は壁に凭れ掛る。後方壁面には、海でヴァイオリンを弾く宮田の動画が投影される。宮田は床にヴァイオリンを置き、左指で弦を擦る。ヒグマは座ったまま動かない。
     
宮田は立ち上がり肩にヴァイオリンを構え、強いボーイングを放つ。実像と映像が向き合っている。ピッチカートに移行する。ヒグマは上体を沈めたまま立ち上る。左壁面に映る梱包材内部から捕らえるライブを、外部にあるカメラからの映像に切り替える。
     
宮田は重いパッセージの、ボーイングとピッチカートを交互に繰り返す。左指でヴァイオリンのボディを叩く。それは偶然にも映像と重なっている。ヒグマはゆっくり移動して、座る。その僅かな様子を、映像がとらえている。
     
ヒグマは横たわり、内部からの上部を撮影する映像に切り替える。オレンジの光が展開している。宮田は和音をボーイングで奏で、梱包材の近くに座り、ヴァイオリンを置く。梱包材を潰して音を指で操る。
     
宮田はその姿勢で軽くボーイングをし、そのまま立ち上る。ヒグマは内部から宮田にカメラを向けているのだが、梱包材越しなので撮影できない。映っているはずなのにとらえることのできない映像が面白い。
     
宮田は弦を左指先で弾きヴァイオリンを頭上に掲げると、それは映像のヴァイオリンに触れることとなる。ヒグマはカメラを、外からのライブ映像に切り替える。宮田は右手を後方壁面に這わせながら、移動する。
     
ヒグマは再びカメラを内部に切り替え、素早く動かしていく。宮田はヴァイオリンをギターのように構えて右指で弾き、弓でボディを叩く。ヒグマは背を床につき、その上げた足をカメラで映している。
     
宮田は大きなボーイングを放つ。動画が止み、再び写真のズームとなる。海辺の夕日を写す「冷たい耳とあたたかな網膜」。ヒグマは外からのライブに切り替えて、足を下ろして横たわる。宮田はヴァイオリンのブリッジの内側を弓で擦る。
     
写真は「斜光」。宮田は弓でアルペジオを奏で、ヒグマは沈黙する。宮田は深いビブラートをかける。写真は「光背」。ヒグマは仰向けで両手を重ねて上に引き上げる。宮田は和音を奏でる。写真は「見えないと気になる光景」。
     
ヒグマは映像を内側のライブに切り替える。カメラをプロジェクターに向けているのだが、青い光が左壁面に映し出される。写真は「点滅する蛍光灯の中で」。ヒグマはカメラを動かす。写真はマネキンとその映像が重なる「虚実だが事実」。
    
宮田はきついボーイングをする。写真はダンサーを撮影した「腕にできた口は真実を語り」。ヒグマは自らの影を映す。写真は「眼球が飛び出した瞬間」。宮田は弦を弾きながら立ち上り、自らの左手を見詰める。
     
写真は「座ったまますれ違う」、雪化粧した木を映した「ふんわりした冷たい形」と続き、海で遊ぶ烏の動画で終了する。宮田が弓を捨てて、50分の公演は終了する。
       
ヒグマと宮田の往復書簡的連想写真、宮田の予め撮られた映像と実体は、ヒグマの中と外への思想に繋がった。{文:宮田徹也(日本近代美術思想史研究) }