山谷(yamaya)が政策学を志す大学1回生・高校生の皆さんにお薦めする「新書」「文庫」


 政策学とはいろいろな学問領域にまたがる「学際的(inter-disciplinary)」な研究分野です。その研究対象は法律学の「法律」・法的行為、経済学の経済活動というように簡単に提議することができません。ただ、一般には政府が立案し、実施する「policy」を対象としております。あるいは、企業や個人が彼らにとって好もしい政策を政府が作るように働きかけるという意味では、企業や個人個人、さらには京都議定書のように他の国が関わってきますので、これらの企業や個人・外国政府も研究対象に含まれます。

 ところで政策学の研究では法律学、経済学、財政学、会計学、統計学、組織論、政治学、行政学など、いわゆる「社会科学」の研究で深められた視点を活用して、物事を見ることが必要です。世の中、社会が複雑化しているからです。その「見方」は一般社会では年を重ね経験を経るごとによって豊かになりますが、そうした個人の努力だけでは十分ではありません。大学でまなぶのですから、「見る方法」を社会学や社会心理学、経営学、経営工学、統計学、文化人類学などの方法を応用して洗練することが必要です。歴史に学び、よその国と比較することも必要です。時には地理学や生物学、土木工学、医学などの「自然科学」の助けを借りて、問題をより深く認識する、たとえば詳しく分析してみたり、他と比較して考えてみるというような方法を試みる必要があります。もっとも、「政策学を勉強する」という自覚を持たないでこれらの諸学問にアプローチすると、それぞれがとても面白いため、学や知の大きな潮流の中で溺れてしまうでしょう。

 そのため政策学をまなぶためには、受験勉強とは違った意味での勉学によって本質的な問題関心、基礎的な社会的知識・素養、心構えをなるべく早い時期に身につけておく必要があります。そして、その一番手っ取り早い方法は読書です。

以下の新書や文庫は、いまの高校生や大学の1回生ぐらいの皆さんにとってみれば、必ずしも読みやすいものではないでしょう。また、経済や政治、その他の分野が新旧入り交じっているため、雑多な種類だという悪印象を持たれるかも知れません。「役に立つのか」と疑問を持つ人もいるでしょう。しかし、すべて政策学を学ぶ上で、「何らかの」役に立つでしょう。どんな風に役に立つか、それは講義の時にお話しします。ですから、実際の手に取ってみて下さい。高校や大学、街の図書館で借りるのも結構ですが、書店あるいはインターネット(http://books.mokuren.ne.jp/t241.shtml)を通じて購入することが大事でしょう。私自身1974年に大学へ入学した時、今は亡き高島善哉という目の不自由な大先生の講義(社会科学入門)で「手元に大事な本を置くことが研究の第一歩である」と教わりました。高島先生は途中で失明されたのですが、(目が見える時に読んだ)本にさわった感触で何かが伝わったそうです。また、故・大原光憲先生(政治学)は「身銭を切った本でなければ身に付かない」とおっしゃいました。限られた金銭的余裕で、時には食事を抜いた金でどの本を買うのか、それもまた勉強だったとおしゃられました。私自身、理由は分かりませんが、子供の時から本に対するフェティシズム(物心崇拝)が強いため、これらの先生のお話はすんなり腑に落ちましたが、いまのインターネットの時代、どれだけ皆さんに説得力があるか自信ありません。ただし、紙(カミ)でできている本を馬鹿にする人を、本の神(カミ)様は助けてくれないと確信しております。ですから、大事な本を他人に売ったり貸したりしません。

 本を手に、沈思黙考することは、インターネット時代でも大事です。

 ただし以下の本、すべてが良書だというわけではありません。ちょっと変かな、という本もあります。どの本の、どこが変なのかな、そんな話を私としてみませんか?
 

川喜田二郎『発想法』、中公新書、1967年6月。

川喜田二郎『続・発想法』、中公新書、1970年2月。

宇沢弘文『自動車の社会費用』、岩波新書、1974年。

戸部良一・他『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』、中公文庫、1991年7月。

阿部謹也『「世間」とは何か』、講談社現代新書、1995年7月。

松下圭一『政治・行政の考え方』、岩波新書、1998年4月。

桜井哲夫『自己責任とは何か』、講談社現代新書、1998年5月。

橘木俊詔『日本の経済格差 所得と資産から考える』、岩波新書、199811月。

本間義人『国土計画を考える』、中公新書、1999年2月。

兼子仁『新 地方自治法』、岩波新書、1999年9月。

松下圭一『自治体は変わるか』、岩波新書、199910月。

小池洋次『政策形成の日米比較 官民の人材交流をどう進めるか』、中公新書、199911月。

内田洋子『破産しない国イタリア』、平凡社新書、199911月。

カレル・ファン・ウォルフレン『人間を幸福にしない日本というシステム』、新潮oh!文庫、200010月。

谷岡一郎『「社会調査」のウソ リサーチ・リテラシーのすすめ』、文春新書、2000年6月。

山岸俊男『社会的ジレンマ「環境破壊」から「いじめ」まで』、PHP新書、2000年7月。

宇沢弘文『社会的共通資本』、岩波新書、200011月。

林田学『情報公開法 官民の秘密主義を超えるために』、中公新書、2001年1月。

長尾真『「わかる」とは何か』、岩波新書、2001年1月。

岡本浩一『無責任の構造 モラル・ハザードへの知的戦略』、PHP新書、2001年1月。

村田良平『OECD(経済協力開発機構) 世界最大のシンクタンク』、中公新書、2001年1月。

森村進『自由はどこまで可能か リバタリアニズム入門』、講談社現代新書、2001年2月。

水野清・他『「官僚」と「権力」』、小学館文庫、2001年3月。

江畑謙介『日本の軍事システム 自衛隊装備の問題点』、2001年3月。

北沢栄『公益法人−隠された官の聖域』、岩波新書、2001年4月。

中山治『戦略思考ができない日本人』、ちくま新書、2001年7月。

坂本多加雄『国家学のすすめ』、ちくま新書、2001年9月。

草野厚『官僚組織の病理学』、ちくま新書、2001年9月。

印南一路『すぐれた意思決定 判断と選択の心理学』、2002年1月。

渡辺利夫『成長のアジア 停滞のアジア』、講談社学術文庫、2002年2月。

木原誠二『英国大蔵省から見た日本』、文春新書、2002年2月。

新藤宗幸『技術官僚 その権力と病理』、岩波新書、2002年3月。

御厨貴『オーラル・ヒストリー 現代史のための口述記録』、中公新書、2002年4月。

松谷明彦・藤正巌『人口減社会の設計 幸福な未来への経済学』、中公新書、2002年6月。

黒田玲子『科学をはぐくむ』、中公新書、200211月。

加藤尚武『合意形成とルールの倫理学 応用倫理学のすすめ』、丸善ライブラリー、200211月。

古森義久『「ODA」再考』、PHP新書、200212月。

石井陽一『世界の汚職 日本の汚職』、平凡社新書、2003年1月。

岡崎久彦『日本外交の情報戦略』、PHP新書、2003年3月。

薬師寺克行『外務省 外交力強化への道』、岩波新書、2003年8月。

河上和男『汚職・贈収賄 その捜査の実態』、講談社α新書、2003年9月。

有森隆『日本企業モラルハザード史』、文春新書、2003年9月。

金井辰樹『マニフェスト 新しい政治の潮流』、光文社新書、200310月。

東谷暁『エコノミストは信用できるか』、文春新書、200311月。

渡辺利夫・三浦有史『ODA(政府開発援助) 日本に何ができるか』、中公新書、200312月。

武藤博己『入札改革 談合社会を変える』、岩波新書、200312月。

早野透『日本政治の決算 角栄VS.小泉』、200312月。

山本七平『日本はなぜ敗れるのか−敗因21カ条』、角川oneテーマ212004年3月。

堀井秀之『問題解決のための「社会技術」』、中公新書、2004年3月。

関岡英之『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』、文春新書、2004年4月。

山脇直司『公共哲学とは何か』、ちくま新書、2004年5月。

佐々木信夫『地方は変われるか ポスト市町村合併』、ちくま新書、2004年6月。

山口二郎『戦後政治の崩壊 デモクラシーはどこへゆくか』、岩波新書、2004年6月。

増田悦佐『高度経済成長は復活できる』、文春新書、2004年7月。

宮内泰介『自分で調べる技術 市民のための調査入門』、岩波アクティブ新書、2004年7月。

横江公美『第五の権力 アメリカのシンクタンク』、文春新書、2004年8月。

村尾信尚『「行政」を変える!』、講談社現代新書、2004年8月。

三浦展『ファスト風土化する日本 郊外化とその病理』、洋泉社新書、2004年9月。

山田昌弘『パラサイト社会のゆくえ データで読み解く日本の家族』、ちくま新書、200410月。

畑村洋太郎『失敗を生かす仕事術 失敗を創造に転換する技術』、講談社現代新書、200410月。

出井康博『松下政経塾とは何か』、新潮新書、200411月。

中村政雄『原子力と報道』、中公新書ラクレ、200411月。

谷口誠『東アジア共同体 経済統合のゆくえと日本』、岩波新書、200411月。

石本伸晃『政策秘書という仕事 永田町の舞台裏を覗いてみれば』、平凡社新書、200412月。

赤川学『子供が減って何が悪いか!』、ちくま新書、200412月。

斎藤貴男『国家に隷従せず』、ちくま文庫、200412月。

三橋規宏『環境再生と日本経済 市民・企業・自治体の挑戦』、岩波新書、200512月。

村上陽一郎『安全と安心の科学』、集英社新書、2005年1月。

草野厚『歴代首相の経済政策全データ』、角川oneテーマ21(新書)、2005年1月。

本橋哲也『ポストコロニアリズム 植民地主義は今も続いている』、岩波新書、2005年1月。

村上政博『独占禁止法 公正な競争のためのルール』、岩波新書、2005年1月。

島本滋子『住宅喪失 住宅も信用も失う?』、ちくま新書、2005年1月。

櫻川昌哉『金融立国試論 カネ余りの不況はなぜ起きたのか?』、光文社新書、2005年1月。

金子郁容『学校評価 情報共有のデザインとツール』、ちくま新書、2005年2月。

山家悠紀夫『景気とは何だろうか 景気から見る日本経済の現状分析』、岩波新書、2005年5月。

浜辺陽一郎『コンプライアンスの考え方 信頼される企業経営のために』、中央新書、2005年2月。

吉見俊哉『万博幻想−戦後政治の呪縛』、ちくま新書、2005年3月。

中村靖彦『牛肉と政治 不安の構図』、文春新書、2005年3月。

星浩『自民党と戦後 政権党の50年』、講談社現代新書、2005年4月。

藤沢晃治『理解する技術 情報の本質が分かる』、PHP新書、2005年4月。

ロナルド・ドーア『働くということ グローバル化と労働の新しい意味』、中公新書、2005年4月。

林信吾『しのびよるネオ階級社会 “イギリス化”する日本の格差』、平凡社新書、2005年4月。

畑村洋太郎『失敗学のすすめ』、講談社文庫2005年4月(単行本は200011月)。

松下文洋『道路の経済学 アクアラインは800円でよい!』、講談社現代新書、2005年5月。

久米郁夫『労働政治 戦後政治の中の労働組合』、中公新書、2005年5月。

松田浩『NHK 問われる公共放送』、岩波新書、2005年5月。

伊藤惇夫『政治の数字 日本一腹が立つデータブック』、新潮新書、2005年5月。

関満博『現場主義の人材育成法 ここから日本は変わる!』、ちくま新書、2005年6月。

矢作弘『大型店とまちづくり−規制進むアメリカ、模索する日本』、岩波新書、2005年7月。

越澤明『復興計画 幕末・明治の大火から阪神・淡路大震災まで』、中公新書、2005年8月。

小林英夫『満鉄調査部 「元祖シンクタンク」の誕生と崩壊』、平凡社新書、2005年9月。

川北隆雄『経済論争 −いま何が問われているのか−』、2005年10月。

大庭健『「責任」ってなに?』、講談社現代新書、2005年12月。

三國陽夫『黒字亡国 対米黒字が日本経済を殺す』、文春新書、2005年12月。

大竹文雄『経済学的思考のセンス お金がない人を助けるには』、中公新書、2005年12月。

アマルティア・セン『人間の安全保障』、集英社新書、2006年1月。

粟野仁雄『アスベスト禍−国家的不作為のツケ』、集英社新書、2006年1月。

結城康博『医療の値段−診療報酬と政治−』、岩波新書、2006年1月。

森生明『会社の値段』、ちくま新書、2006年2月。

池田清彦『環境問題のウソ』、ちくまプリマー新書、2006年2月。

河辺一郎『日本の外交は国民に何を隠しているか』、集英社新書、2006年4月。

竹中治堅『首相支配 −日本政治の変貌−』、中公新書、2006年5月。

真野俊樹『入門医療経済学 「いのち」と効率の両立を求めて』、中公新書、2006年6月。

坂本賢三『「分けること」とわかること』、講談社学術文庫、2006年6月。

御厨貴『ニヒリズムの宰相 小泉純一郎論』、PHP新書、2006年6月。

樋口晴彦『組織行動の「まずい!!」学−どうして失敗が繰り返されるのか』、祥伝社新書、2006年7月。

高橋祥友『自殺予防』、岩波新書、2006年7月。

関岡英之『奪われる日本』、講談社現代新書、2006年8月。

門倉貴史『統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか』、光文社新書、2006年10月。

中野麻美『労働ダンピング −雇用の多様化の果てに』、岩波新書、2006年10月。

山本直治『公務員、辞めたらどうする?』、PHP新書、2007年1月。